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整形災害外科学研究助成財団トラベリングフェローシップ サンフランシスコ(木下隼人)

令和5年10月23日~11月3日の約2週間,整形災害外科学研究助成財団のトラベリングフェローシップを利用し,Zuckerberg San Francisco General Hospital and Trauma Center(以下,ZSFGH)へ短期留学に行かせて頂きました.

 令和2年度の受賞時,カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco . 以下,UCSF)の長尾正人教授のご高配により,サンフランシスコへ留学する事となっておりましたが,当時,コロナ禍がちょうど日本に押し寄せて来ていた頃で,昨年,ようやく実施することができました.

 ZSFGHの整形外科チームは,『Ortho Blue』『Ortho Gold』の2チームに分かれており,『Ortho Blue』は関節(股関節・膝関節)・脊椎・骨盤・小児を,『Ortho Gold』は手・スポーツ・足を専門に治療にあたっており,自分は今回,専門分野である脊椎が含まれている『Ortho Blue』のチームに所属し,手術およびクリニックでの診察を見学させて頂きました.

 脊椎外科医は三名の先生(Dr. El Naga,Dr. Gendelberg,Dr. Xu)が担当しておりましたが,留学中は主にDr. El Nagaの脊椎手術を見学致しました.

【OrthoBlue(Team spine)】

(向かって左がDr. El Naga.中心はresidenntのDr. Baldwin)

【OrthoBlue(Hip&Knee)】

(Dr. Marmorとともに)
   (Dr. Toogoodとともに)

 『Ortho Blue』の手術は基本的に火・水・金に行われ,Trauma Centerでもあるため,脊椎の手術は,変性疾患というよりも,外傷を主体として行われておりました.緊急手術が多く忙しく立ち回る中でも,ナビゲーションシステムを用いてのインプラントの挿入,術後O-アームを用いての即座のスクリュー挿入位置確認など,要所要所で丁寧な仕事をしており,感銘を受けました.麻酔は,麻酔科医の他,CRNA(Certified Registered Nurse Anesthetists),いわゆる麻酔看護師と呼ばれている方々もかけており,大いに腕をふるっていました.

クリニックでの診察では,患者が各部屋に待機し,医師やNP(Nurse Practitioner)が診察に回る方式でした.ResidentやNPが予診を行い,その後担当医が診察するという流れでした.NPの予診は徒手筋力テストなども行われ,パッと見た感じでは,residentと遜色のない診察がなされており,CRNAを含め,アメリカにおける看護師資格の多様性・専門性の高さに感動しました.

また,ZSFGHはサンフランシスコにあり,その特性上,スペイン語や中国語を主体とする患者様が多い印象でした.それぞれの言語を話せるスタッフもいましたが,基本的には通訳者に電話連絡し,電話越しのそれぞれの通訳担当者を介して,患者とやり取りをしていました.

全体を通じて,ZSFGHスタッフは忙しい中でも活き活きと仕事をしており,お互いにスキンシップを大事にしている明るい職場で,短い間ではありましたが,楽しく留学をさせて頂きました.この場をお借りし,UCSFの長尾正人教授ならびにZSFGHで働いているスタッフの皆さんに深謝申し上げます.

(長尾教授とともに)

Ramathibodi病院(タイ)研修(整形災害外科学研究助成財団トラベリングフェローシップ) (木村竜太)

2023年12月18日から22日の1週間、タイのマヒドン大学ラマチボディ病院で、脊椎外科の研修を行いました。秋田大学整形外科では宮腰尚久教授が日本脊椎脊髄病学会トラベリングフェローでラマチボディ病院を訪問して以来の交流が続いており、現在のchairmanのProf. Pongsthor Chanplakornの秋田研修以来、ここ数年で3名の脊椎フェローの先生が秋田に研修に来られていました。今回秋田からの独自フェロー訪問は初となりました。

ラマチボディ病院は、1023床のとても大きな病院で、さらに周囲の複数の病院と歩行者デッキで繋がっており、巨大な病院網が形成されていました。デッキ間を患者さんがゴルフカートで移動・搬送されているのは日本では見ることのない文化でした。うち整形外科は40床で実情全くベッドが足りていないため、現在は少し離れた分院として、 Chakri Naruebodindra Medical Institute (CNMI)が2017年から一般的な整形外科手術を担当しながら機能を分離しているそうです。今後もバンコク周囲に複数のラマチボディ病院の関連病院がオープン予定であり、バンコクの医療供給が全く間に合っていないことを実感いたしました(待機的脊椎手術は半年〜数年の待機になるそうです)。

外来見学では、日本と同様のシステムで診察を行なっていました。薬剤についても保険でのカバー比率が大きいため、基本的には適切な薬剤選択が可能とのことでした。始まりと終わりに「サワディークラップ」「コップンクラップ」と合掌しながら挨拶される様子は、どこか日本にも通じるものを感じました。

3年前に秋田に研修に来てくれたDr. PilanのCNMIへ訪問し手術を見学することもできました。Dr. Pilanがスタッフドクターとして独り立ちし、秋田の手術技術を取り入れながら治療をしていることを伺い、とても嬉しく思いました。手術はFED-IL(全内視鏡下椎間板摘出術 椎弓間アプローチ)とXLIF(腰椎側方進入椎体間固定術)の見学をしました。XLIFはDr. Pilanにとって初めての一人手術ということで、サポートに入ったことをとても喜んでくれました。無事終えることができ、海外でこのように協力して手術を行うという貴重な経験をすることができました。

Pilanの初めてのXLIFを一緒に終えて。

その夜はDr.Plianの実家に泊まらせていただきました。素晴らしい豪邸で、建築コンサルティング業をしていらっしゃるお父さんから日本としてきた仕事についてのお話をいただけたのもとても楽しかったです。

また5月に来てくれたDr.Issaraも秋田での経験をもとに、現在治療にあたっていることを伝えに来てくれました。秋田に行って本当によかったと言ってくれたことが、何よりのお返しでした。

ディープなタイを案内してもらいました。

転移性脊椎腫瘍に対する除圧固定では、透視なしでスクリュー刺入が行われていました。私達は当然のように透視を使っていることを見つめ直す機会となりました。現在は使われていないものの、Rama spine system(RSS)という独自の脊椎手術システムの抜釘の機会があり、ロングプレートを用いた整復は矢状面、環状面ともに素晴らしい成績でした。またシニアドクターのDr.Ganはタイで初めてFESS(全内視鏡下脊椎手術)を導入され、その多くの経験をもとに、FED ILとendo-TLIF(全内視鏡下腰椎経椎間孔椎体間固定術)の手術を見せていただきました。とても丁寧な手術で、多くの学びを得ることができました。

正面法のみで腰椎ブロックを行っていたので、斜位法を伝えてきました。

脊椎のインプラントとして、通常の医療保険で賄えるのが一世代前のインプラントになる、椎体間ケージは1椎間1つまで、神経モニタリング使用できない(追加の支払いが発生)などの制限があるなか行われている手術を拝見し、我々が国民健康保険によって大きな利点を得られていること改めて実感しました。

また、整形外科には常に30名ほどのレジデントと、10名前後のフェローがいてとても活気がありました。

送別会にて。
トゥクトゥクも初体験。現地人はしっかり値引き交渉してから乗っていました。

マヒドン大学とは、今後も相互交流を継続していきたいと考えます。そして、2024年3月には今回多くの案内をしてくれたDr. Sorasekが秋田に来てくれる予定です。実りの多い研修となるよう準備して参ります。

最後にこのような機会をいただき、誠にありがとうございました。この経験をもとに今後も一層精進してまいります。

AO Spine Travelling Fellowship @Perth (木村竜太)

2023年7月の1ヵ月間、AO SpineのTravelling Fellowshipの機会を頂戴し、AustraliaのPerthで脊椎手術を学ぶことができました。

今回の訪問先となったNeuroSpine Instituteは4名の脊椎外科医のチームです。(写真左から)Dr. Taylor (Ortho)、Dr. Miles (Neuro)、Dr. Cunningham(Ortho)、Dr. Kern (Neuro)の手術を見学することができました。

(NeuroSpine Institute HP)

AO Spine Fellowship CentreのDirectorとして主にお世話になったのが、Dr. Paul Taylorです。Dr. Taylorはイギリス生まれで、15年前からオーストラリアで脊椎外科医として働かれています。他の3名の先生もヨーロッパから移住してオーストラリアで働かれています。

不安もありながらの訪問でしたが、みなさんにとても温かく迎えていただき、充実した毎日を過ごすことができました。

この1ヵ月間は、新久喜総合病院から同じ期間にTravelling Fellowとしていらっしゃった景山寛志先生と一緒に学ぶことができました。脳神経外科医でいらっしゃることから、景山先生と日本語で整形外科と脳神経外科の少し違う目線でディスカッションしながら手術に参加できたことは、英語だけの環境では得られない細かな情報の習得にもつながり、また心強い仲間として素晴らしい時間をご一緒することができました。

(左から景山先生、私、Dr. Taylor)

手術室のスタッフも皆優しく、英語が下手な私を、いつも笑顔で助けてくれました。入退室から体位設定、外回りでは、男性の看護助手的な方の力が大活躍でした。この仕組みはぜひ日本でも取り入れてほしいです。

また麻酔の導入も、患者さんがマスクを持っていて、寝たらすぐ挿管(マスク換気しない)、末梢ラインも本体はつながず必要な薬液をワンショット、なのでうつ伏せへの体位変換も繋がっているコード類がなくとても安全で楽でした。入室から10分で手術可能な状態になるのは驚きでした。そのおかげで、連日縦で4〜5件の脊椎手術が行われていました。

脊椎手術は、頚椎、腰椎共に前方手術が基本となっていることが、我々の手術と大きく異なる点でした。前方除圧固定術・人工椎間板置換術を連日見ると、私達も後方手術に依存しすぎないようにしなければならないと感じました。

頚椎の前方アプローチにおいて、Dr. Milesは常にuncovertebral jointの切除をされていました。人工椎間板置換術を行う上で、その骨切除が自分にとって壁に感じていましたが、適切な、そして素早い手術操作を教えていただきました。

腰椎の前方は、ATP (Anterior To Psoas) approach で行われていました。日本ではまだ器械が導入されていませんが、かなり自由度の高いレトラクターを用いることで、直視下に椎体間固定が可能でとてもいい方法だと思いました。またL5/S1に対しても同方法の延長で前方固定を積極的に行われていました。L5/S1も前方からのアプローチが、脊椎外科医でも安全に可能なものであることを実感しました。

今回一番衝撃を受けた症例がいます。高度の変性後側弯を有する慢性腰痛に対しL5/S1の前方固定だけが行われ、痛みがほぼなくなったという高齢女性に会うことができました。自分ならlong fusion以外の選択肢は提案できなかったと思います。L5/S1の前方固定は、後方で代用できるもの、と思っていました。しかし、この方に対して後方からのL5/S固定で同じ結果が得られるとは到底思えません。あくまで感覚なものではありますが、L5/Sの前方固定が最適な症例がいる、という感覚を得ました。

スクリュー刺入はナビゲーションも多く使われていました。ナビのための術中CTは、リモコン操作で可動できる小さなCTで撮影が可能、終わったら元の置き場に戻っていくCTはとても可愛らしくもたくましく思えました。

(リモコンで移動も可能なCTはとても実用性が高かったです。撮影後は手術室外の置き場に戻って行きました。)

外来(Clinic)は、病院の一室ではなく、別にあるクリニック棟のなかで行われます。とても綺麗な部屋でリラックスした雰囲気での診察は、日本の「the 病院」という雰囲気とは全く異なっていました。

純粋な脊椎疾患だけでなく、慢性疼痛で悩んでいる方の受診や、結構多かったのが痛みで仕事復帰できないため保険主と一緒に受診するパターンでした。抑うつを併発されている方もいましたが、ただそんな方々に対してもDr. Taylorは、「手術のマイナスの因子かもしれないが、それを理由に手術しないということはない」と言っていました。社会的な課題でもあるこの点について、脊椎外科医としてとるべき姿勢をみせていただくことができました。

休日はオーストラリアを満喫させていただきました。

Dr. Taylorにはweekend houseに招待いただき、インド洋のサンセットを眺めながら砂浜でのんびりビールを飲んだり、朝はPark Runで地域の方と一緒に走ったり、昼から同僚の麻酔科ドクターや看護師さんご家族と、購入したてのピザ焼き機を使って手作りピザとワインを楽しんだり。休日の素敵な生活を体験させていただきました。

カンガルーは野良がいっぱいいて、家の前にも普通にいるのは衝撃的な光景でした。

ちょうどパースでサッカーのプレミアリーグの試合があったのでスタジアムで観戦したり、ワールドカップ女子サッカーをパブリックビューイングで観戦したり、オーストラリアンフットボールを観戦したり。夜はホテルのテレビでクリケットをみてみましたが、これはよくわかりませんでした。

妻も同行させていただきましたが、Perthに行くことが決まってから、いつのまにか現地の日本人の方と知り合いになっていました。妻のコミュニュケーション能力の高さを改めて実感しました。地元では有名な富豪の方で、超豪邸に遊びに行かせていただくこともできました。

Dr. Taylorからは800km北にドライブしてこいと言われましたが、ちょっとそれは、と思い、200kmドライブしてピナクルズに行ってきました。上限速度は100km/hで比較的安全にドライブできましたが、果てなく続く直線に、大陸を運転しているなーという感じでした。

Perthは西オーストラリア州の州都です。シドニーとインドネシアが同じくらいの距離にあるということで、アジアが距離だけでなく経済的にもとても近く、特に韓国人が多い街でした。街中は多様性そのものでしたが、車は半分以上が日本車のため、道路は馴染みやすかったです。

公的サービスが本当に素晴らしく、無料バスが常に走っていたり、毎日早朝に清掃車が走行し街はゴミのない状態から1日がスタート、公園にはトレーニング機器やランニングコースが必ず設置されていました。車椅子の方がエクササイズとして走っていたことも大きな衝撃でした。

(公園のトレーニング機器には骨粗鬆症の説明も)
(街中にアートがあり、カラフルな街は歩いているだけで楽しくなります)

オーストラリアはイタリアからの移住も多いのですが、その流れでコーヒー文化が盛んな国です。スターバックスが撤退したのも有名な話です。街を歩けばあちこちにカフェがあり、病院の休憩室にも必ずエスプレッソマシンがあります。しかも、ラテやカプチーノだけでなく、ショート・ロングブラック、フラットホワイト、ショート・ロングマキアート、ピッコロ、カフェモカなど種類も豊富。コーヒー好きにはたまりません。

(https://www.comunicaffe.com/australia-coffee-giant/)

また「アボリジニとの共存」、というのもオーストラリア独特の文化でした。社会的な課題も多々あるようですが、異なる文化と共存するという生活は日本にはないものだったため新鮮でありながら、興味深く体感することができました。

報告したいことはまだまだありますが、本当にたくさんの学びがあった1ヵ月でした。

不在中サポートいただきました、脊椎グループならびに医局の皆様、本当に貴重な機会をいただきありがとうございました。

Dr. Taylorとclinicで

「世界にはいろんな生き方がある」、それを知ることができたのが今回の1番の学びでした。

妻とインド洋を眺めながら。 photo by Dr. Taylor

Dr. Issaraが1ヶ月の脊椎フェローシップを修了しました

2023年5月の1ヶ月間、タイのRamathibodi HospitalからDr. Issara Chandrsawangが脊椎フェローシップとして秋田で研修を行いました。

コロナ前のDr. Wittawat、Dr. Pilanに続いて3人目のタイからのフェローです。

現在脊椎1年目というDr. Issaraですが、とても優秀かつ、優しさに溢れる方で、すぐ我々の中に溶け込んでくれました。

秋田大学と秋田厚生医療センターを中心に、北秋田市民病院や市立横手病院、平鹿総合病院などで約30件の脊椎手術に参加いただきました。

手術以外にも、一緒にバーベキューや、まだ雪の残る鳥海山を登山、男鹿の街中をランニングしたりと秋田を満喫していただけたと思います。

Dr. Issaraのコメントです。

I am warmly welcomed by everyone. This team is very kind to me. I learnt many things not only in academic issue but also good Japanese culture.
I appreciate it that I had the opportunity to be in this team.
The schedule was excellent. There are many operations that I’ve seen and taken part in especially in spinal deformity surgery.
I would suggest Akita university hospital to my colleagues if they wanted to go abroad for spine surgery training.
I’m certain that I would visit here again in the future.

C.Issara ,M.D.

ผมได้รับการต้อนรับอย่างอบอุ่นจากทุกๆคนในโรงพยาบาลเมืองอาคิตะ ทุกคนดีกับผมมากๆ ผมได้เรียนรู้มากมาย ไม่เพียงความรู้ทางการแพทย์ แต่รวมถึงวัฒนธรรมที่ดีของประเทศญี่ปุ่นด้วย
ผมประทับใจมากที่ได้มีโอกาสเป็นส่วนหนึ่งของทีมนี้ตารางกิจกรรมดีเยี่ยม มีการผ่าตัดมากมายและหลากหลาย โดยเฉพาะอย่างยิ่ง Spinal deformity surgery
หวังอย่างยิ่งว่าจะได้มีโอกาสพบกันใหม่ครับ

นพ.อิศรา จันทร์สว่าง

Dr.Issara、こちらこそとても楽しい思い出をありがとうございました!

今後も秋田大学整形外科では、Ramathibodi Hospital, Mahidol Universityと交流を続けて参ります。

ぜひ近いうちに秋田からもタイへ学びに行こうと思います。

札幌医科大学整形外科研修報告 (湯浅悠介)

2018年10月15日~26日の2週間、札幌医科大学整形外科で手外科の分野を中心に研修させていただきました。札幌には何度も訪れたことがあるのですが、札幌医大への訪問は初めてで、初日はとても緊張しておりました。しかし山下敏彦教授、射場浩介准教授をはじめとする先生方、スタッフの皆様からとても優しく受け入れていただき、大変居心地の良い2週間を送らせていただきました。
研修ではカンファレンス、手術、外来、病棟と細部まで見学させていただきました。カンファレンスは非常にレベルが高く、若手の先生が上級医の質問に対し堂々と返答していたことが印象的です。手術は手指、足趾の多合指症に対する手術、手根管症候群、肘部管症候群などの絞扼性神経障害の手術、手指感染の手術、肘関節鏡視下滑膜切除、広背筋皮弁などCommon diseaseから秋田ではなかなか経験ができない稀な疾患まで、様々見学させていただきました。また射場准教授の外来も見学させていただき、手外科医としての診療を勉強させていただきました。私の稚拙な質問に対して、毎度丁寧にご教示いただき誠にありがとうございました。10月20、21日は札幌医大でキャダバートレーニングが行われ、私も参加させていただきました。手・肘関節鏡のポータル作成から鏡視、滑膜切除、骨棘切除まで知識のない私に一からご指導いただき、非常に貴重な経験をさせていただきました。また、今まで経験のなかった手・肘関節周囲のアプローチも行い、解剖を改めて勉強いたしました。ご指導いただきました上肢班の先生方、本当にありがとうございました。ご多忙であるにもかかわらず射場准教授からは、臨床研究をすること、そのアイディアを生み出すためにすべきこと、論文を書くということの大切さなどもお話しいただき、非常に勉強になりました。
最後に、私の研修を快く受け入れて下さった山下教授、射場准教授をはじめとする札幌医大整形外科の皆様、そしてこのような機会を与えて下さった島田教授、宮腰准教授、留守中に大変ご迷惑おかけしました秋田大学の先生方には、この場をお借りし深く感謝申し上げます。この経験を過去のものにすることなく、日常診療に役立てることはもちろんのこと、さらに発展させていけたらと考えております。今後も邁進してまいりますのでご指導・ご鞭撻の程よろしくお願い致します。

AO Spine travelling fellowship in London (工藤大輔)

今回、2018年9月24日から10月19日の日程で、London Bridge Hospitalで研修する機会をいただきました。お世話になった先生は、Mr Lamで、低侵襲手術(以下MIS)から脊柱変形手術まであらゆる手術をこなされていました。本邦では近年、腰椎に対して側方進入手術が増えてきているものの、まだまだ後方手術が主流と思われます。Mr Lamは、MISにこだわっており、除圧であれば円筒形レトラクターを使用し、小皮切で、固定であれば通常、腰椎前方固定術(ALIF)にO-armナビゲーション下の経皮的椎弓根スクリュー固定を行い、背筋の温存に努められていました。また本邦では、まだ一般的ではない仙腸関節障害に対する経皮的な仙腸関節固定術や、頚椎、腰椎人工椎間板置換術、小児側弯症に対するMagnetic controlled growing rodなどを見学することができました。頚椎手術は多椎間の前方固定術が多く、前後合併手術なども行っていました。

研修は手術だけでなく、外来を見学する機会もいただきました。腰痛、頚部痛を中心に、側弯症の症例なども勉強させていただきました。またイギリスの診察の雰囲気、診察の手順、英会話なども大変勉強になりました。今回、手術に入るために自分自身が実際に患者として近医を受診し、血液検査を受けたということもあり、日本との医療システムの違いなども勉強になりました。

4週間の研修期間でしたが、私が経験したことのない手術を多く勉強することができ、大変有意義なものとなりました。本研修で学んだことを今後の診療に役立てられるよう、日々邁進していきたいと思います。

 

留学報告㉗あとがき(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

留学ブログ あとがき

2018年3月26日に無事帰国し,4月から復職させて頂いております.いない間に変わっていた電子カルテシステムにも慣れ,仕事のペースも思い出し始めました.バタバタしていて投稿できていなかったブログ原稿の残りを全てアップして,留学ブログを終了しようと思います.

 

実は,2017年9月にセットアップのためにサンフランシスコに行ったのが,自分1人だけで行った初めての海外でした.おかげさまで学会や旅行などで何度か海外に行く機会はあったのですが,必ずそばに誰かがいる状況でした.降り立ったときは楽しみと言うより,どちらかというと呆然とか絶望とかに近いモノで,ものすごく不安だったことを今でも鮮明に覚えています.飛行場から鉄道に乗ってダウンタウンに出ることすら一苦労で,1人でレストランに入ったりはできず,買い物するのもいちいち緊張を強いられる作業でした.

9月中旬に家族が合流してからは更にまた不安が増えます.娘の学校が決まり,家具が揃って生活が落ち着くまで1ヶ月ほどかかりました.その間は不安感で悪夢を見ながら動悸をして朝起きるという日が続きました.

OTIに行って,ミーティングに参加してもまわりが話している2割も分からずついていけませんでした.でも,毎日顔を合わせる研究助手さんと,朝にどうでもよい世間話を30分ほどするようになり,だんだんなんとなく聞き取りができるようになってきました.何よりもサンフランシスコという土地柄,英語とスペイン語と広東語が入り乱れる外来を見ているうちに,多少変な英語を恥じらう必要性が全くないことを悟りました.英語は単なるコミュニケーションツールに過ぎないとわりきり,どんな形でも発音でも相手の言うことを理解して,自分の言いたいことを理解してもらうことが重要だということに少しずつ気づいてきました.

少し会話が成り立ち始めるとだんだん楽しくなってくるもので,いつの間にか朝の悪夢や動悸も無くなり,感謝祭やクリスマスなどの休暇には家族で旅行などもする気持ちの余裕もでてきました.ベイエリアの日本人医師の先生や整形外科の先生との交流することができて,今までに無いほどの刺激を受けることができました.

12月まではOTIでリハビリテーションを中心に見学していましたが,1月からは自分の希望する他病院の見学やラボ見学を多数させてもらうことができました.3月になりようやくIRB(日本の倫理委員会)が通り,最後の2週で臨床研究のデータ取りを行っていました.最小限のデータは取れたので今後論文化するように尽力しますし,知り合えた先生方やスタッフとまた共同研究が行えればうれしいと考えています.

留学中,言葉や文化,システムの違いに戸惑い,驚き,羨望し,日本を顧みて日本の良いところ(悪いところも)を思い出し,今後の改善策や試してみたいことを考えていました.そんな繰り返しをしているうちに,今までは考えなかったような広い視野を頂いた気がします.米国の医療システムと日本は根本的に違うし,今の時代インターネットで十分わかると言われるかもしれませんが,生活して肌で経験することで分かったことが多かった気がします.本当にこの経験をさせてもらえて良かったです.今後はこの貴重な経験を少しでも還元していけるよう尽力したいと考えております.

不在の間,医局,外勤先の先生方,スタッフの方々には大変ご面倒ご迷惑をおかけしました.また,留学中は秋田大学のみならず,他大学の先生方,UCSFの先生方やスタッフに多大なるご助力を頂きました.この場を借りて御礼申し上げます.

最後に,この留学を御裁可御高配頂いた島田洋一教授,快く受け入れて下さったUCSF長尾正人先生に深く御礼申し上げます.ありがとうございました.今後ともよろしくお願い申し上げます.

留学報告㉖テック企業回り(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はテック企業巡りについて.

サンフランシスコを含めたベイエリアと呼ばれる地域はシリコンバレーとして有名で,テック企業の本社が目白押しです.一部旅行会社ではこの企業を巡るツアーも開催されているようです.休日,買い物や会合などのついでに立ち寄ったテック企業を掲載します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UBER:簡単に言えば白タクサービスです.サンフランシスコに本社があり,いろいろ世間を騒がせています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Twitter:個人的には使っていませんが….テンダーロインと呼ばれる治安の悪い地域の近くに本社を構えることで,多額の助成金を受け取ることができるらしいです.

 

 

 

 

 

 

Dropbox:自宅から歩ける距離のところにDropboxの本社がありました.野球場のすぐそばで開放感のある場所です.

 

 

 

 

 

 

 

 

(旧)Yahoo!:日本のYahoo!とは色が違います.既に事実上,事業が解体されているため,もうすぐこの看板もなくなるのかもしれません.そこらかしこに関連ビルが沢山ありました.

 

 

 

 

 

 

Apple旧本社:ここに併設されているApple storeでしか買えないグッツがあるため,好きな人は訪れたい場所です.

 

 

 

 

 

 

Apple 新本社:旧本社から車で10分かからないところに巨大な宇宙船の様な建物が.一般客用にビジターセンターが開放されています.

 

 

 

 

 

 

 

 

ガレージ:Apple発祥の地と呼ばれるところ.ここのガレージで初代のApple製品が開発されたということです.今も誰かが住んでいるので写真だけ.

 

 

 

 

 

 

 

 

Google:一つのビルだけでなく,辺り一帯がgoogleというイメージです.

 

 

 

 

 

 

 

スタンフォード大学:広すぎてなにがなんだか….敷地内に美術館やショッピングモールがあったりします.

 

 

 

 

 

 

 

 

Facebook:ひっきりなしに観光客が来ていました.

 

 

 

 

 

 

有名な話ですが,以前の企業の看板に布をかぶせただけです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IntelとAMDはハイウェイを挟んで向かい合っています.

 

 

 

 

 

 

Adobe でかいです.

 

 

 

 

 

 

 

 

あんな事件が起こるとは….

つづく

留学報告㉕リハビリ専門医(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はリハビリ医について

日本のリハビリテーション医の定義は「病気や外傷の結果生じる障害を医学的に診断治療し、機能回復と社会復帰を総合的に提供することを専門とする医師(日本リハビリテーション医学会HPより)」です.

米国のリハビリテーション医はPhysical medicine and rehabilitation (PM&R)の専門教育を終了した医師(Physiatrist)であり,「物理医学とリハビリテーション(PM&R)の医師は、脳、脊髄、神経、骨、関節、靭帯、筋肉、腱に影響を及ぼす様々な病状を治療する(PM&R HPより)」と定義されています.

日米の違いは,日本は病気や外傷の結果の障害に対する治療を目的にしているのに対し,アメリカでは筋骨格神経系の保存療法とリハビリテーション含めた治療を行います.このため,アメリカのリハ医 ≈ Physiatristの治療範囲は,日本の整形外科の保存療法もその範囲に含まれます.そのためリハ医 ≈ Physiatristといっても,入院患者を専門に診るFung先生のように内科系による医師や,長尾正人先生のようにneedle specialistとしてinjectionを中心に外来専門に行う医師や,Lisa先生のように脳梗塞痙性麻痺に対する,テトロドトキシンinjectionや,装具処方など幅広く行う医師,Kazuko先生のように脊損を中心に診療する医師など,医師の意識や勤務されている病院のニーズなどで決まり,典型的な勤務スタイルはありません.しかし,全員に共通するのはそのバックグラウンドにPM&RのレジデンシーというPM&Rを基礎から学ぶ教育プログラムを受けていることで,どの分野に進んでも問題ないような下地ができています.

さらなるSubspecialityフェロープログラムとしてNeuromuscular medicine,Pain medicine,Pediatric rehabilitation medicine,Spinal cord injury,Sports medicine,Brain injury,Hospice and palliative medicineがあり,より専門性の高い治療領域に進む医師もいるということです.

日本では回復期リハビリテーション病棟の急激な増加にともない,リハビリテーション専門医の不足が指摘されています.

元来リハビリテーション自体の概念が幅広いものであり,医学的リハビリテーションだけを絞っても,今後Subspecialityが必要になることは日本でも十分に考えられます.逆に言えば,もともとSpecialtyを持った他科からの参入される医師が力を発揮しやすい科と言えるかもしれません.新専門医制度が始まり,そのプログラムの中で総合的なリハビリテーションをベースとして学ぶことができるシステムが構築されれば,自分の長所を活かすことができるリハビリテーション科専門医は,どの医師にとっても非常に魅力的な専門医であると思います.

 

つづく

留学報告㉔Santa clara valley medical center(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はSanta clara valley medical center見学

サンノゼ近郊にあるサンタクララバレーメディカルセンターという病院を見学させて頂きました.創設100年以上の歴史のある公立病院です.スタンフォード大学に御留学中の前田俊恒先生とご一緒させて頂きました.

つい最近まで以前は100年以上前に建てられた病棟を使用していたようですが,2017年12月から新病院に移転したそうです.今回はその新病棟の見学をしてきました.

 

 

 

 

 

見学の案内をして下さった先生はSham Kazuko先生というSpine injury center(日本でいう脊損センター)のチーフで,日本語が非常に堪能な先生です.

リハビリテーションセンターのリハ医は10人程在籍しており,そのうち4人が脊損専門,5人が脳梗塞系専門とのことでした(もう1人の専門は忘れてしまいました…).また,セラピストはPT,OT,ST合わせ100人を超えているそうですが,女性の比率が高く実際に働いているのはその8割程度とのことでした.それでも十分なスタッフの人数です.

 

 

 

 

 

まだ使用して3ヶ月の新病棟は,1階がリハビリ,2階はICU,3階は脊損リハ病棟,4階は脳梗塞病棟,といった配置です.部屋は個室と2人部屋で,脊損病棟の部屋には前室リフトがあり,風呂場,トイレまでつながっていて早期リハビリの手助けをしています.各病棟に小さな訓練室があり,急性期で移動が大変な時は1階まで降りずにその場所を使うそうです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後,外来棟も見学しました.外来にもリフトがついている部屋が2つあり,褥瘡などの診療の手助けになるそうです.特にこちらの患者さんは大きな人が多いのでリフトがないと辛いようです.

 

 

 

 

 

Sham Kazuko先生は臨床とともに臨床研究も活発に行っている先生で,数々のグラントを取得されています.その中には遠隔リハビリテーションのグラントもあるそうで,実際にipadを使用して指示を出すなどの診療をされていました.スタンフォード大学が近いこともあり,再生治療の治験も行われているそうです.

帰国直前でしたが,見学できて大変勉強になりました.Sham Kazuko先生,御紹介下さった森岡和仁先生にこの場を借りて感謝申し上げます.大変ありがとうございました.

 

 

 

 

 

 

 

 

左から筆者,Sham先生,前田先生.