月別アーカイブ: 2016年3月

第29回日本創外固定・骨延長学会に参加して(野坂光司)

3月18,19日,第29回日本創外固定・骨延長学会(会長:金沢大学整形外科 土屋弘行教授)に参加いたしました.

今回はご多忙の中,島田洋一教授が前日の幹事会,会長招宴からご参加くださいました.総会では第32回日本創外固定・骨延長学会の会長を島田洋一教授が務めることが正式に承認されました.我々にとっては夢のような瞬間でした.参加者は病棟からは岩原さん,金さん,柴田さん,上野さん,工藤さん,仲山さん,リハビリテーション部から渡邉先生,外来から中畑さん,大学からは私,土江先生,益谷先生,水谷先生,尾野先生,市立病院から柏倉先生と湯浅先生,平鹿総合病院から千田先生,理学療法士のお二人,横手から冨岡先生が参加しました.全110演題中,シンポジウム,パネルディスカッション含めAIMG関連が12演題と圧倒的発表数でした.上級医の発表も素晴らしかったですが,ヤングドクターの堂々とした態度は特筆すべきものがありました.質疑応答も立派な内容でした.土江先生のパネルディスカッションも堂々たるものでした.また柴田さん,渡邉先生の発表内容も非常に緻密で,間違いなく医師レベルでした.AIMGがなぜ大人数のIlizarov創外固定患者を外来管理できているのか,いつも私が質問を受けることですが,秋田で行われている,上手なリハビリテーションによる早期荷重,上手な創外固定管理による早期退院の秘訣を改めて全国にアピールしてくれた内容でした.

また18日夜に行われた恒例のAIMG大懇親会も盛大に行われました.その後は,AIMGメンバー全員が国内留学させていただいた獨協医科大学越谷病院の皆さんと合流し親交を深めました.

今回の学会中に湯浅悠介先生が新たに我々のメンバーに加わることが島田教授から発表されました.湯浅先生とは市立秋田総合病院でもいつも一緒に手術をしておりますし,硬式庭球部の後輩でもありますが,手術もテニスも上手いナイスガイです.AIMGの主力メンバーに育ってくれることを期待しております.来年は久留米大学の白濱正博教授会長のもとで開催されます.今後は『IlizarovとMicroの融合』を目指して,秋田手の外科グループとの共同セミナーなども視野に入れながら,高齢者骨粗鬆症性骨折,難治性偽関節,手外科,足の外科,そして重度四肢外傷と様々な分野でIlizarovを役立てていけるようにしたいです.『秋田を日本のクルガンに』の実現に向けて走り続けたいと思います.

創外固定1創外固定2創外固定3創外固定4

第52回秋田県脊椎脊髄病研究会 (木村竜太)

3月12日、第52回秋田県脊椎脊髄病研究会が開かれました。

まず、「研修医・若手整形外科医へむけた脊椎外科基礎講座」として、はじめに畠山雄二先生から「神経診察・理学所見の取り方」、実臨床でまず若手が覚えなければいけない点を詳細に、わかりやすくご説明いただきました。SHR(Scapulohumeral reflex)などは、実際の患者さんの動画を見ることで理解が深まりました。

次に「脊椎前方アプローチの解剖と術中の注意点」として頚椎を石川慶紀先生、胸椎を本郷道生先生、腰椎を粕川雄司先生にお話いただきました。現在改めてその必要性が認識されている前方アプローチですが、リスクのイメージが先立つところが難点と思われます。これらに対する対策を、解剖を含め詳細にお話いただきました。

ミニレクチャーは佐々木寛先生「化膿性脊椎炎の動向」です。高齢者の増加とともに、極めて一般的な疾患となっていますが、診断から治療まで系統だってレクチャーいただきました。保存療法が第一選択であることからも、整形外科医もより抗生剤の使用方法について学ぶ必要があると感じました。

一般演題は4題の発表がありました。その中から最優秀演題として斎藤光先生の「腰椎椎体感固定術における術中トラネキサム酸投与の有用性について」が選ばれました。斎藤先生は初期研修医ながら、質問にも適切に返答されており、堂々たる受賞でした。

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特別講演1が大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学准教授の寺井秀富先生「Midcervical central cord syndromeの病態と治療」です。初めて聞く疾患概念でしたが、その患者像を聞くと、今まで見た患者さんの中にも当てはまる方が複数いたように思います。1995年に初めて報告されたものですが、高齢化に伴い患者数が増加、今後は頸髄症の重要な一部と捉える必要性を感じました。前方固定術で不安定性を除くことで、良好な成績が得られるため、確実な診断、治療を行いたいです。

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特別講演2が和歌山労災病院脊椎センター長の安藤宗治先生「術中脊髄機能モニタリングの必要性と留意点」です。安藤先生は脊髄モニタリングの第一人者であり、秋田大学からも多数の医師が研修させていただいております。今回は各モニタリングの詳細な原理や方法を、実際の症例を交えながらご教示いただき、そしてmultimodalityの必要性を最後に述べていらっしゃいました。脊椎外科の発展とともに、高度脊柱変形に対する手術治療も積極的に行われる反面、その術後合併症の低減は課題の一つです。脊髄モニタリングは術後麻痺を回避するために必須の手段と考えます。より安全で確実な治療のためにも秋田県内での使用を増やしてまいります。

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米国整形外科学会(AAOS) 参加報告 (土江博幸)

この度、3月1日~3月5日まで行われた米国整形外科学会(AAOS)に参加させて頂きました。今回の参加メンバーは、島田洋一教授をはじめ、大学からは粕川雄司講師、木島泰明先生、私土江と、AAOS Travelling fellowに選ばれました、秋田厚生医療センターの菊地一馬先生、角館総合病院の斉藤公男先生、研修医の三浦隆徳先生、船木玲奈先生、東海林諒先生の総勢9名でオーランドへ旅立ちました。

学会場では各自の専門分野の講演を聞き、国際学会のレベルを実感しました。

脊椎のCase presentationというコースでは,脊柱変形に対する手術治療のプランニングと合併症対策というテーマで10個程度のグループにわかれてディスカッションを行い勉強しました.ひとつのグループは10名程度で,それぞれのグループに1人Facultyがつきました.コース全体の座長が1例ずつ症例を提示し,その症例について各グループでFacultyを中心に問題点や手術プランニングについてディスカッションしました.その後,全体で1人のFacultyが解説をかねて術前のプランニングなどを提示し,次に座長が行った手術を提示して最終的な討論を行っていました.頚椎の後弯変形,腰椎固定術後のインプラント折損による後弯変形,先天性疾患に伴う高度脊柱変形の症例で,合計6例について2時間かけて勉強しました.患者背景では喫煙の有無をとても重要視している印象で,喫煙している方では禁煙してから手術を行うとの意見がほとんどでした.各症例の経過や画像がかなりシンプルで判断に迷う点も多くありましたが,複数の手術症例についていろいろな意見を聞くことができ勉強になりました.

世界最大規模と呼ばれる機器展示会場では、人工膝関節のトライアルインサート型の圧センターなど注目すべき機器がみられました。オーラルプレゼンテーションでは、Nが数万のデータベーススタディやコホートスタディばかりでしたが、たとえば 人工関節後の感染リスクは肥満、ASA≧3、喫煙、ステロイドの常用使用、手術時間増大、80歳以上

など今までの見解からの大きな進歩はみられませんでした。関節グループが特に注目した演題は、アメリカならではの長短期入院の演題で、 日帰り入院人工関節と一泊入院人工関節を比べると日帰りの方が傷に関する合併症も血栓も心臓アタックや致死的な合併症なども多いというものでした。やはりどんなに短期がいいとしても一泊ぐらいは経過をみたほうが合併症が少ないということでしょう。そして上記のように人工関節の演題が多く、骨切りの発表はアメリカではほとんど見られませんでした。

腫瘍に関しては、やはり海外だからか豪快な手術を行った報告も見られ、Nは100前後と関節の発表と比べれば一見少ないですが、腫瘍学から見れば多い症例数であり、興味深いものも多かったです。発表内容とは別で個人的な事ですが、昨年短期研修をさせて頂いた金沢大学から、ポスター・口演など多くの演題が採択され、自分よりも若い先生が舞台に上がって発表されている姿を見て、なんてレベルが高いのだろう、と思うと同時に、自分も頑張らないといけないと、とても刺激を受けました。

研修医の先生方は、初めての国際学会に参加し、それぞれ興味のある分野の講演を聞き、わからないところもあったかもしれませんが、とてもいい刺激を受けたと思います。また、初めての国際学会にも関わらずみなさん臆する事もなく、とても将来が楽しみに思えました。

 

学会への参加により上がったモチベーションを落とさないように、日本に帰ってからも頑張って行きたいと思います。目指せ、AAOS演題採択!

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イギリス留学記 ~その7~ (工藤大輔)

ここ最近も側弯手術を中心に勉強させていただいた。Consultantの先生により、テクニックの違いがあり面白い。どの先生もスクリュー刺入はフリーハンドで、大きな合併症はもちろんないが、プロービングの際の逸脱や、プローブがうまく進まないといったことはそれなりの頻度である印象だった。グレビット先生は主にDepuy SynthesのUniversal Spine System (USS)を使用されているが、腰椎の刺入から始め、スクリューについたガイドピンが順に並んでいくので椎体の回旋が明瞭となり、プロービングが困難な際もピンが指標になるので非常に有用と思われた。またプローブが内外側に外れた際も、角度をつけてハンマーで叩き込むなど逸脱したときの対処も難なくこなされ、さすがと思われた。先日は約130°の固い胸椎側弯の症例で、右開胸での6椎間の前方解離が行われた。Halo ringによる牽引を行い、後方手術はこれからであるが、どのように矯正されるのか興味深い。

渡英してまもなく英語の勉強もしたいと思い、英会話教室を探してみたが、日程がなかなか合わないのと値段もそれなりに高いので家庭教師を探してみた。何人かの先生をインターネットで見つけることができたが、そのうち日本語も話せるという先生がいたのでお願いし、週1回レッスンを受けている。とにかく明るい先生で日本での英語教育のご経験も豊富とのことで毎回楽しく勉強している。家まで来てくれるので、たまに気が乗らない日でも強制的に勉強できるので、そういった点でも家庭教師を頼んで良かったと思った。また英語の発音もとても分かりやすい。先生曰く、ノッティンガムの発音は少し分かりにくいとのこと。イギリス英語とアメリカ英語の違いも教えてもらったが、2ヵ月ちょっと暮らした感じでは特にアメリカ英語だから通じないということはなく、むしろ日本語のカタカナ英語に惑わされ、通じないことが多い。前にイタリアから来た先生と頚椎椎弓形成術の話になり、何を使って骨を切るか聞かれた際、drillが通じなかったのが悲しかった。

(写真14)写真14

ノッティンガム中心部、Old market square