月別アーカイブ: 2017年6月

第37回日本骨形態計測学会に参加して (尾野 祐一)

2017年6月22日〜24日に大阪で開催された日本骨形態計測学会に参加しました。大学院で行っている基礎研究から、赤川学先生が「糖尿病モデルラットにおける低強度有酸素運動と活性型ビタミンD製剤の血糖と骨密度に対する効果」を、私が「アジュバント関節炎ラットの骨密度と関節炎に対するエルデカルシトールとイバンドロネートの効果」を発表し、臨床からは長幡樹先生が「組織学的診断により骨軟化症と診断された脆弱性骨盤骨折の1例」を発表しました。

“医歯薬工連携による骨形態計測学の新たな展開”というテーマで、演題にはHigh Resolution peripheral Quantitative CT(HR-pQCT)や定量的超音波法(QUS)、Trabecular Bone Score(TBS)といった評価方法を用いた演題が多くみられました。秋田に導入するのはまだまだ難しいのですが、DXA法による骨密度測定だけでは評価しきれない骨粗鬆症を治療していく上で、こういった新しい評価方法が今後は普及していくのだろう、と感じました。また、生活習慣病と関連した骨粗鬆症についての発表も多数あり、慢性腎臓病や糖尿病に伴う骨粗鬆症は、それぞれ病態が異なり、使用すべき薬剤や評価方法もそれぞれ異なることを学びました。自分たちは、整形外科医ではありますが。骨粗鬆症診療をするにあたっては内科疾患についての理解も深めておくことが必須であることを感じました。本会で得た知識を日々の診療や自分の実験に活かし、また、後輩の基礎研究のテーマの参考にしていければと思います。

最後に、赤川先生の演題が本会の若手研究者賞を受賞されました。日々、ラットへの薬剤経口投与やトレッドミルなど、苦しい実験を共に経験した大学院A-BONEメンバーにとっても、この賞は大変うれしいものでした。赤川先生、おめでとうございます!!

 

第54回日本リハビリテーション医学会学術集会(齋藤光)

平成29年6月8日から10日にわたり、岡山コンベンションセンターをメイン会場に第54回日本リハビリテーション医学会学術集会が開催されました。島田洋一教授をはじめ多数の医局員の先生、リハビリテーション科の先生と参加して参りましたので報告させていただきます。

日本リハ学会は約1万人が参加する国内トップレベルの規模を誇ります。秋田大学からは21題と多数の演題が採択され、それぞれ発表を行い、大きな注目を集めました。私も「大腿骨近位部骨折地域連携パス使用患者の骨粗鬆症治療について」というテーマで地域包括ケアに関する発表をさせていただきました。

我が国は2025年には4人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎えるとされ、高齢者のQOLの維持向上のためリハビリテーション医療の重要性は今後さらに増してきます。また医工連携や再生医療の発展により急速な発展が期待される分野であり、最先端の知識を常に吸収していく必要性を感じました。今回の学会参加の経験を日常診療に活かし、整形外科医として、関係職種の方と協力しながら、リハビリテーション医療に取り組んでいきたいと思います。

 

第114回東北整形災害外科学会に参加して(湯浅悠介)

6月9、10日、新潟大学教授遠藤直人先生を会長として、新潟市の朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターにて第114回東北整形災害外科学会が開かれました。今回、秋田からはシンポジウム、学生セッションを含む17演題が採択され、分野別では外傷、脊椎、膝、足、リウマチ、小児など、多岐にわたる発表がありました。また、野坂光司先生によるハンズオンセミナー「Pilon骨折に対するILIZAROV創外固定による治療~MATILDA法の有用性~」も開催され、秋田の勢いを感じることができました。本学会の特徴の1つに挙げられる、例年以上に多い外傷セッションは、若手整形外科医にとって非常によい刺激となりました。

6月9日にはシンポジウムが2つ設けられており、1つが「小児下肢骨折・骨端線損傷の治療」というテーマで、もう1つは「若手整形外科医による整形外科関連外傷治療への取り組み:外傷治療の標準化とネットワーク構築」というテーマでした。いずれのシンポジウムも秋田を代表して益谷法光先生が発表されました。1つ目のシンポジウムでは「小児大腿骨骨折における治療方法の選択」と題し、具体的な症例を提示しながら手術方法を中心とした治療方法について発表されていました。小児下肢骨折の基本は保存療法とされながらも、早期社会復帰を目的としたEnder釘による低侵襲手術の方法や、基礎疾患のために骨脆弱性を有する症例に対するIlizarov創外固定による治療方法などをご提示いただきました。一律して保存療法を選択するのではなく、各症例の背景も考慮した治療戦略が求められているのだと感じました。2つ目のシンポジウムでは「秋田県におけるIlizarovとmicroの融合を目指した外傷治療への取り組み」と題し、秋田県の外傷治療の歴史と今後の展望をわかりやすくまとめて発表されていました。島田洋一教授が秋田県にIlizarov創外固定という強力な武器を導入していただいたことで、秋田県の外傷治療は再スタートすることができたこと、現在野坂光司先生を中心として、様々な重度四肢外傷にも対応することが可能となってきたこと、今後さらなる進化を続けるためにmicroとの融合を図っていることなどを述べられておりました。秋田県における外傷学が全国トップレベルに到達するためには、東北各県とのNetworkを大切にし、お互い高め合う関係を築くことが重要になると感じました。

6月10日に行われた学生セッションでは、秋田県を代表して秋田大学医学部医学科6年の小滝優平君が発表しました。「学生、研修医向けエコーガイド下神経ブロックトレーニングプログラムの試み」と題して、学生、研修医へ向けてのエコー実習の有用性をアンケート結果から考察していました。何週間も前から準備し、直前まで入念に発表練習していたため、本番は実に堂々と発表しておりました。また、同時にその立ち振る舞い方からは持ち前の人柄の良さも滲み出ており、質疑応答の場面では会場を笑いの渦に巻きこんでいました。自分が同じ立場にあったら、こんな大舞台であんなに堂々と発表することまずできません。今回の発表を通して、将来、小滝君が大物の整形外科医になることを確信いたしました。

たった2日間という短い時間でしたが、刺激的であり、とても得るものの多い学会となりました。自分も秋田の地から東北、そして全国へ発信できるような仕事をしていきたいと思います。

第11回国際関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 (ISAKOS) 木島泰明

2017年6月4~7日、中国・上海にて国際関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 (International Society of Arthroscopy, Knee surgery, and Orthopaedic Sports medicine: ISAKOS) が開催されました。秋田からは市立大森病院の嘉川貴之先生、市立横手病院の大内賢太郎先生、そして秋田大学から木島泰明の3名で参加してまいりました。

この学会は膝関節のみならず関節鏡やスポーツ整形に携わる世界中のドクターが集まる学会で、秋田大学整形外科の臨床グループとしてはASAKGが担当する分野の世界最高峰の学会で、日本のJOSKASの世界版です。

ISAKOSは2年に1回、奇数年しか開催されませんが、前回大会は第10回の記念大会でフランス・リヨンで行われました。2年前の当時、私はちょうどリヨンに留学しておりましたので初めてこの学会に演題を登録しポスターで発表したときに、秋田からASAKGメンバーが多数リヨンに参集してくださり、久しぶりに秋田のみんなに会えたのを懐かしく思い出しました。

今回は大内賢太郎先生が秋田県体育協会強化指定選手のメディカルチェックデータを利用した肩関節の演題、木島が宮腰准教授・粕川講師のご尽力で行われている秋田県阿仁町運動器検診のデータを利用した膝関節の演題を発表してまいりました。世界中から多数の演題が寄せられるため演題採択率は2割前後と言われていますが、その中で秋田大学整形外科から複数演題が採択されたのも、上記のような地域に密着した活動を継続して行ってこられたおかげだと思っております。(ちなみに木島の演題はすでにパブリッシュされております。興味ある方はぜひ→https://doi.org/10.1155/2017/6793026

また学会ではキャダバーを利用したライブサージェリーの発表もあり、最近、肩関節鏡分野で目覚ましい技術発展を遂げている嘉川貴之先生も、新たな技術の習得ができそうな手ごたえを感じてくれていたようでした。

学会の合間には、三国志の時代に呉の孫権が建立した由緒あるお寺を訪ねたり、夕食には魯迅の小説に出てくるソラマメを食べられる中国の大衆食堂風なところに出かけたりすることもでき、中国語の得意な嘉川先生に来ていただき本当に助かりました。

次回のISAKOSはメキシコのカンクンです。2年後までにしっかり準備し、ぜひASAKGからより多数の演題を世界に向けて発信できるよう、みんなで楽しみにがんばりましょう!

第90回日本整形外科学会学術総会(塚本泰朗)

第90回日本整形外科学会学術総会が, 5月18日〜21日まで東北大学・井樋栄二会長のもと仙台で開催されました.

秋田大学からは各臨床グループより数多くの演題が採択され, その演題数は42と過去最高を記録しました. 全国でも採択演題数は第6位とトップレベルで, 日頃の各臨床グループでの研鑽が花開いた結果だと思います.

 

初日のシンポジウムでは, 宮腰尚久准教授が『骨形成促進作用を持つ薬剤による骨粗鬆症治療』と題して, 各薬剤の特徴や使用法などが整理でき, 骨粗鬆症を専門としていない先生方にも大変分かりやすいご講演でした.

また, 島田洋一教授もランチョンセミナーで,『高齢者に対する脊椎手術の問題点とその工夫』というタイトルでご講演され, 高齢者治療の豊富なエビデンスを有する当県から全国に向けて情報発信をされておりました. 私が専攻している膝関節分野においても, 高齢化率全国第1位という結果を逆手にとり, 最先端の高齢者治療を全国に先駆けておこなっていこうという今後のビジョンが構築することができました. その他にも連日同門の先生による多数のご発表があり, 全国に秋田大学の勢いを見せつけられたと思います.

 

また, 学会期間中に例年スポーツ親善大会が開催されており, 私も秋田大学オフィスバスケットボールチームである秋田ノーザンバイソンズの一員として, バスケットボール競技に参戦してきました. 出場チーム数は51チームで, トーナメント表の大きさだけでも, 注目度の高さが伺える大会となっていました. 我々は去年の第1回大会の覇者として2連覇を至上命題に毎朝6時からバスケットボールの試合に望みました. 初戦こそ動きの固さがみられ, 苦しい試合となりましたが, 二回戦以降はキャプテン赤川の正確なミドルシュート, テクニカルディレクター藤井の身長を活かした攻守での安定したプレー, 齋藤のドライブインやジャンプシュートで相手に付け入る隙を与えずに, 順当に決勝戦まで勝ち進みました.

 

決勝の相手は過去一勝一分で最大のライバルである慶應義塾大学との対戦となりました. 相手は元国体選手を筆頭に, 高さとフィジカルを前面に出したプレースタイルで, サイズの小さい我々は戦前より対策を練って試合に望みました.

試合は序盤から相手のインサイドと, 我々のアウトサイドの攻め合いとなり, 一進一退の展開となり, 息をつく間もないほどでした. しかし徐々に相手の高さを活かしたインサイドでの攻撃を止められず, 徐々に点差を広げられていき, 25対31で敗れてしまいました. 優勝以外は敗者同然の気持ちで臨んだ大会ですので, このリベンジを果たすべく仕事の合間をぬって, フィジカル強化と高さへの対応策を次大会までに行い, 必ずや整形外科日本一の称号を奪回してみせます。

第9回 秋田県小児整形外科研究会(粕川雄司)

2017年6 月3日土曜日、第一会館にて第9回となる秋田県小児整形外科研究会が開催されました。小児の整形外科疾患について勉強になった大変有意義な研究会でした。

一般演題では秋田労災病院の東海林諒先生、秋田厚生医療センターの三田基樹先生、町立羽後病院の阿部和伸先生、中通総合病院の村田昇平先生、秋田県立医療療育センターの湯浅悠介先生と柴田暢介先生、市立秋田総合病院の瀬川豊人先生から発表がありました。普段あまり診療することがない小児整形外科疾患についての発表、骨髄炎や骨系統疾患についてのまとまった症例検討、検診や外傷についての詳細な研究についての演題で大変勉強になりました。そのなかから、三田基樹先生「脊椎リンパ管腫症の1例」が最優秀演題賞に選ばれました。三田先生、おめでとうございます。

続いての小講義では、秋田県立医療療育センターの高橋靖博先生から「乳幼児期における足部疾患の診断と治療」、三澤晶子先生から「脊柱運動器検診の経過と問題点」という演題名で御講義頂きました。高橋先生からは小児の足部疾患についてその特徴や診断・治療法についてわかりやすく講演いただき、三澤先生からは昨年の脊柱運動器検診の結果や、今年度の内容、診察の注意点などについてお話し頂きました。

最後に特別講演では、千葉県こども病院整形外科部長 西須 孝先生より「小児整形外科における内視鏡手術」と題してご講演いただきました。非常に多数の小児の関節疾患に対する内視鏡手術について動画を交えて大変わかりやすくお話しいただきました。新たな手法を模索し、実際に治療に結びつけるように日々のお仕事をされていることに大変感銘を受けました。遠路はるばる秋田までお越しいただきご講演いただきました西須 孝先生、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

普段は診療する機会の少ない小児疾患ですが、診断や治療の知識をしっかり持つことはとても重要と感じており、今後もこの研究会を通して勉強していきたいと思います。来年度は第10回ということでお祭りになるとのお話しでしたので、来年も楽しみに参加したいと思います。幹事・担当の先生方、ありがとうございました。

平成29年度阿仁健診(湯浅悠介)

本年度も5月12日、15日、16日、27日に阿仁地域で運動器健診を行いました。私も5月15日の健診に参加致しました。

平均寿命が長くなってきている現在、今度は健康寿命をいかに伸ばしていくかが課題となっております。運動器症候群と訳されるロコモティブシンドローム(以下ロコモ)は、運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態を指します。その原因としては運動器自体の疾患によるものと加齢による運動器機能不全によるものがあると言われております。

今回の健診を通して、阿仁地域の住民の方には自分の現時点での運動機能がどのくらい保たれているのかを知っていただき、ロコモを未然に防ぐことで、より健康的に毎日を過ごしていただけたらと思っております。また、毎年受けることで、経年的な変化をとらえることができるため、ロコモ予防に対するモチベーションにつながればと考えております。

高齢化の進む秋田が元気であり続けるよう、整形外科医として今後も貢献していきたいと思います。