月別アーカイブ: 2018年9月

第67回東日本整形災害外科学会開催!(長幡樹)

2018年9月21日22日の2日間で秋田大学が主催の第67回東日本整形災害外科学会が行われました。本学会はH10年の第47回に秋田大学主幹で開催されて以来、20年振りの秋田での開催でした。たくさんの著名な先生方の特別講演や、パネルディスカッションなど大変勉強になる講演、また熱い議論が各会場で行われていました。

この学会の理念として若手整形外科の育成が掲げられており、case report awardや若手優秀演題アワードなど若手が主役となれるセッションが設けられています。今年も我々秋田大学同門からも、case report awardには大屋敬太先生の「腰椎開窓術後に椎弓骨折を来した4例」の演題で受賞となりました。また若手優秀演題アワードでは岩本陽輔先生が「大転子部痛症候群に置ける鏡視所見と病態の検討」の演題で、また自分も「大腿骨頸部骨折の治療法選択と年齢との関連―大腿骨近位部骨折1042例からの解析―」の演題で受賞させていただくことができました。今まで大きな学会での受賞という経験がなく、とても光栄で貴重な経験をさせていただきました。選出していただした座長の先生、また指導していただいた関連の先生方、本当にありがとうございました。この場をお借りして感謝いたします。また今後の医療・学会活動の励みにもなりました。

また藤井昌先生は昨年の学術奨励賞受賞を受賞し「変形性膝関節症に置けるbone marrow lesionsと骨強度パラメーターとの関連」の演題で受賞者講演をしました。多くの秋田大学の若手がピックアップされ、大いに盛況な学会でした。

この学会には親善スポーツプログラムというもう一つのメインイベントがあります。「親善」とは名ばかりに各大学の威信をかけて駅伝・バスケットボール・フットサルの3競技がプロ顔負けの熱のこもった試合を繰り広げていました。初代大会から未だ負けなしの6連覇中の我々秋田大学駅伝部は今年もホームコースである一つ森公園でライバル千葉大学との激走を繰り広げました。年々「打倒秋田大学!」と各大学が力を入れてきており、2区までは3位と他大学に専攻される展開でしたが、三浦隆徳先生が圧巻の走りで1位となって中継、そしてcase report awardも獲得した新戦力、大屋敬太先生が本大会中最速の走りで見事1位の座を死守して堂々の7連覇を成し遂げました。Bチームも見事3位入賞を果たしました!

バスケットも東日本整形災害外科学会では現在2連覇中。ライバル慶應義塾大学との決勝戦を危なげない試合運びで勝利し、見事3連覇を成し遂げました。ここまで入念にジムで体を鍛え上げ、選手交代のタイミングまで綿密に計算し教授からの「絶対勝利」というプレッシャーをはねのけての優勝でした。

フットサルは決勝トーナメントに見事進出しましたが惜しくも3位決定戦に破れてしまい4位でした。エスパニョーレキャプテンの尾野先生、またエース高橋先生を中心に、新戦力の井野先生との連携で相手を崩し、嘉川先生の新しいキーパーグローブを一日でダメにするほどファインセーブを繰り返し決勝トーナメント出場に貢献していました。

学術面でも、スポーツ面でも今学会は秋田大学の躍動が目立った会になったと思います。会長を務めた島田洋一教授をはじめ運営のために裏で走り回っていた粕川先生、大学スタッフの先生、本当にお疲れ様でした。また遠方からはるばる学会に参加していただいた先生方、本当にありがとうございました。

一つ森公園での駅伝大会 優勝後の集合写真。教授ご婦人にスターターをしていただきました!

 

 

閉会式後 学会主催お疲れ様でした!

2018年甲子園帯同報告③(井上純一)

平成30年8月5日から開催された全国高等学校野球選手権大会の秋田県代表の秋田県立金足農業高等学校の野球部に8月9日~12日、15日~17日の期間帯同させていただきました。

帯同メディカルチームは理学療法士2名、医師1名で構成されており、練習や試合の間の選手のコンディションを整えることが主な働きです。大会期間中の大阪は非常に暑い日が続いており、熱中症対策も非常に重要で、練習・試合前にはアイシング用の氷を用意しました。練習・試合で選手が受傷し、医療行為が必要と考えられた場合は、現地の医療機関を受診も必要となります。私が帯同していた期間にも医療機関を受診する必要がありました。普段私は医療機関で患者さんを診察していますが、今回は練習現場に帯同することで受傷現場に立ち会う立場となりました。その受傷現場での処置や医療機関への受診の要否について判断する立場となり、非常に勉強になりました。今後の診療にも活かしていきたいと思います。

今回は3回戦の試合が帯同中にあったため、試合に向けての選手のコンディショニング調整し、試合中は応援団に混ざって金足農業を応援しました。劇的な逆転勝利を間近で見て、非常に感動しました。

最終的には金足農業高校は準優勝と秋田県勢史上最高の結果を残しました。秋田県内のみならず日本全国が金足農業に魅了されました。私もこのような形で関われたことは非常に幸せなことで、このような機会を与えていただいたことに感謝致します。本当にありがとうございました。金足農業甲子園準優勝本当におめでとうございます。

2018年8月6日~9日甲子園帯同記録 ②(湯浅悠介)

 

2018年、夏。秋田中が、日本中が震えた。カナノー。全国的には決して有名ではない彼らが、この夏の主人公になった。

8月6日、私は甲子園へ飛んだ。伊丹空港を出ると、秋田では感じたことのないへばりつく暑さが身体中を覆う。ホテルに到着し、前任者から引き継ぎを受けた後、初めて彼らと合流した。真っ黒に焼けた肌と、鍛え抜かれた肉体は、この甲子園へかける思いの強さを物語っていた。

8月7日、初めて彼らの練習へ帯同した。練習前のアップから声を出し、気持ちを高めていく。投手の吉田くんは別メニューで、自らの身体を一つ一つ確かめていた。そして、グラウンドへ。私は驚いた。練習へ参加する全員がグラウンドで正座をしだしたのである。そして、片手を挙げ、天に向かって声を張り上げた。その声は夏の高い空へ響き渡った。今思うと、この声が野球の神様に届き、この夏の快進撃を後押ししてくれたのかもしれない。炎天下の中、一球一球集中して練習は行われた。練習後は、須田先生の号令のもと入念にストレッチが行われ、ホテルへ戻った。ホテルへ戻ってからも明日戦うナインたちの身体を十分ほぐした。明日は大切な初戦。意識しないわけがない。

8月8日、初戦。相手は鹿児島実業。この野球に疎い私でも知っている強豪校。試合に出るわけではないのに朝から緊張した。甲子園球場に到着し、まずは神社で彼らの勝利を祈願した。そして、とうとう甲子園球場にサイレンが響き渡る。試合開始だ。金足農業は序盤から鉄壁の守りをみせる。また攻撃では、幾度となく快音が甲子園にこだました。終わってみると5対1。吉田投手はMAX148㎞/h、14奪三振。圧巻の試合内容であった。

8月9日、昨年も帯同を経験しているベテランの井上先生に引継ぎをし、私は甲子園を後にした。

その後、カナノーは強豪校を次々とねじ伏せトーナメントを駆け上がっていく。全県民がその姿に魅了された。2018年、秋田の夏はいつもより熱かった。

第100回全国高等学校野球選手件記念大会に帯同して①(三田基樹)  

 

第100回全国高等学校野球選手件記念大会に帯同させていただきましたので報告させていただきます。秋田大学整形外科は、島田洋一教授の御高配により2009年に日本で初めて甲子園野球帯同を始めており、今年で10年目になります。私は2018年度第一陣として8/3~6まで帯同させていただきました。

大阪に降り立った直後より秋田とは比べ物にならない暑さに驚きました。日差しが非常に強く、立ているだけで汗の滲む環境でした。私の帯同した期間は初戦前でしたので、練習でのケアが中心でした。日中は選手の練習に付き添い、ホテルに戻ってからストレッチなどを施しました。灼熱の中での練習は熱中症を危惧するレベルでした。しかしながら、適度な水分補給やcoolingを自主的に行なっており、選手としての自覚の強さを感じました。選手のコンディションとしては、皆どこかしらに痛みを抱えているものの、日々のケアの甲斐あってか日を追うごとに動きが良くなっている様に感じました。また、金足農業高校野球部の生徒達は集合時間に決して遅れることなく、むしろ約15分前には集合していました。この姿勢にチーム力の強さを感じ、私自身社会人としてもハッとさせられるものがありました。

8/5は開会式に参加しました。私は観客席から金足農業選手の行進を見守りました。彼らの凛々しい姿を自分の目で見ることが出来、光栄でした。選手宣誓で近江高校主将が「昨今の度重なる災害は人々に笑顔だけでは乗り越えられない悲しみを与えたが、甲子園は勇気・希望を与えてくれた」と宣誓しており、会場全体が感動に包まれる高校生とは思えない立派な宣誓でした。始球式ではテレビでよく見ていたヒーロー松井秀喜選手が登場し、とても盛り上がりました。

私が帯同したのは4日間と短期間でしたが、大きな怪我人も出ず安心しました。今回の経験は現場にいるからこそ味わえる貴重な経験であったと思いますし、理学療法士の方々とdiscussion出来たことも非常に有意義でした。甲子園準優勝した高校の帯同ドクターという、非常に貴重な経験をさせていただいたことを感謝いたします。

最後になりますが、金足農業高校野球部選手及び関係者の皆様方、甲子園準優勝誠におめでとう御座いました。

第12回 秋田県整形外科RAトータルマネージメントフォーラム (粕川雄司)

2018年9月7日金曜日、第12回秋田県整形外科RAトータルマネージメントフォーラムが秋田ビューホテルで開催されました。

 

一般演題では、河野哲也先生と阿部秀一先生から「AORAレジストリーにおけるGolimumabの検討」と「当院における認知症状を有する関節リウマチ患者の治療状況の検討」と題しご発表を頂きました。河野先生からは、AORAレジストリーにおける薬剤の使用状況と実際の治療状況について詳細にお話し頂き、阿部秀一先生からは高齢化がすすんでいる秋田県において認知症を有する関節リウマチ患者さんの実際と治療における問題点についてお話しいただきました。関節リウマチの実際の治療について大変勉強になりました。

 

特別講演は、慶応義塾大学医学部 整形外科学教室 准教授 二木康夫先生より「関節リウマチ、脊椎関節炎治療の最近の話題-整形外科の観点から-」と題してご講演頂きました。脊椎関節炎の診断から治療、抗TNF阻害剤による軟骨破壊の抑制効果、さらに12例の単関節炎の患者さんの治療経過とその効果について詳細にご講演いただきました。診断や治療に難渋することもある関節リウマチや脊椎関節炎の治療について、多くの治療例を提示頂き大変勉強になりました。お忙しいところ秋田までお越し頂き、ご講演頂きありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

第44回日本整形外科スポーツ医学会学術集会(木島泰明)

2018年9月7日から9月9日までの3日間、徳島県徳島市にある「アスティとくしま」において第44回日本整形外科スポーツ医学会学術集会が開催されました。会長は徳島大学整形外科教授の西良浩一先生、テーマは「情熱と覚悟~100%を超える復帰」でした。西良教授が会長講演でも話されていましたが、一般整形外科では80%、70%の改善率でも合格点の場合もありますが、アスリートに対しては我々のもとを受診したときのコンデション以上の状態でスポーツ現場に戻してあげる、あるいは、我々のもとを受診しなくてよかったときの状態まで、もっと言えば、そのとき以上のパフォーマンスを発揮できる状態まで持っていくところまでがスポーツ医学であり、そのためには情熱と覚悟が必要なのだ、ということを改めて学ぶことができた素晴らしい学会でした。

昨年の本学会で、秋田労災病院の関展寿先生が発表され、その後、本学会の学術誌である日本整形外科スポーツ医学会雑誌(整スポ会誌)に掲載された論文「脛骨過労性障害の画像診断‐初診時MRIによる疲労骨折とシンスプリントとの検討」が2017年度若手奨励論文賞を受賞され、今年の学会で表彰されました。関先生、本当におめでとうございます。我々Akita Sports, Arthroscopy, and Knee group(ASAKG)のメンバーは関先生を見習って、この学会にどんどん良い研究を報告し、論文化し、このような賞をもらえるよう頑張りましょう!

また今年の本学会は、第16回日韓整形外科スポーツ医学会も併催されており、齊藤英知先生は、日韓スポーツのシンポジウム2「What do I do for sports?」において、Sports Activity after Around-knee-osteotomyについてご発表されました。秋田の骨切りはスポーツができる!ということを、日本全国だけでなく韓国へもアピールして下さいました。

私も超音波エラストグラフィーのスポーツ障害予防に対する有用性について報告してまいりましたが、診断・治療・そして100%を超える復帰だけでなく、障害に至る前に予防することの重要性もアピールできたのではないかと考えています。

来年の本学会は、大阪で中村博亮・大阪市大教授が会長として2019年8月30日‐31日に行われます。我々のアスリートへのサポート活動が充実していることを全国のスポーツ医学関係者に対して(金足農業以上に)アピールできるよう、来年も秋田からいい演題をたくさん発表しましょう!

第14回日本股関節鏡研究会 (木島泰明)

2018年9月1日(土曜日)、北九州国際会議場において第14回日本股関節鏡研究会が開催されました。会長は産業医大若松病院診療教授・内田宗志先生です。内田教授はアスリートに対する股関節鏡手術のパイオニアであると同時に、股関節鏡視下手術の世界的なエキスパートです。2012年に私が初めて股関節鏡手術を見せてもらったのも、ボストンの股関節鏡キャダバーコースで股関節鏡手術手技を教えて頂いたのも内田先生でした。そのようなご縁もあり、秋田にも股関節鏡手術に来ていただいたこともありました。

今回のテーマはThink Globally, Act Locally グローバルに物事を考え、地域で活動する という内田先生らしいものでした。私がこの会に初めて参加したのは2014年の第10回股関節鏡フォーラムのときで、以降第11回からは研究会として開催されています。第2回の会長が有名な杉山肇先生であり、日本では国際股関節鏡学会International Society of Hip Arthroscopy (ISHA) (2018年には当科の藤井昌先生が発表予定)よりも前から股関節鏡に関して議論がなされていましたが、その技術がかなり成熟してきた現在、今までの股関節鏡手術の限界を見極め、股関節鏡以外の新たな知識や手技、あるいは昔ながらの技術をも組み合わせて、より広い視野で股関節外科医が鼡径部痛や臀部痛について考え、議論し、そこで得たまた新たな考えを持ってそれぞれの地域で活動しよう、という素晴らしい研究会でした。

島田洋一教授と羊ヶ丘病院の加谷光則先生のご高配で、私も今年から世話人として参加させていただきましたが、特に股関節鏡に関しては東北地方はまだまだ過疎地域であり、30名の当研究会世話人の中でも東北在住は私も含め2名のみです。ぜひ若手整形外科医は様々な分野から積極的に本研究会に参加してほしいと思います。特に脊椎を中心に今後活動していきたいと考えている若手ドクターは、鼡径部痛や臀部痛の患者さんを診ることが多いと思いますが、そのような場合にも役立つ研究発表がたくさんありましたし、今後さらに増えてくるものと思います。次回の記念すべき第15回は当科若手ドクターが大変お世話になっている加谷先生が会長をされますので、ぜひ2019年9月7日に札幌で秋田からたくさんの発表ができるように、そして秋田の鼡径部痛や臀部痛の患者さんたちが少しでも早くその痛みから解放されるよう、みんなで頑張りましょう!

第6回こまち疼痛を考える会(阿部和伸)

盆踊りが終わり、暑さの中にも秋の気配を感じ始めた2018年8月30日、「第6回こまち疼痛を考える会」が秋田ビューホテルで行われました。整形外科を受診される患者さんは体のどこかの疼痛(痛み)を訴える方がほとんどです。疼痛といってもその種類は様々であり、打撲や捻挫といった急性の痛みから、慢性化した腰痛や膝痛と幅広く、最近ではじんじん、びりびりする神経障害性疼痛といった言葉も浸透してきており、疼痛とその治療に関する知識は私たち整形外科医にとって必須のものです。

 

一般演題は秋田厚生医療センター整形外科の木村竜太先生に「腰痛の保存療法 ~ブロック療法と薬物療法~」という演題をご発表いただきました。腰痛症に有用なブロック療法として前後枝ブロックをはじめ各種ブロック療法について、木村先生の考える適応や方法について非常に実践的かつわかりやすくご講義いただきました。症例提示ではブロック療法が著効した症例などをご紹介いただき、私も明日からの診療で是非実践したくなる内容が盛り沢山でした。その他、論文の批判的吟味を行う方法や、システマチックレビューを行うのに有用なツールの紹介といった学術的な内容をご教示いただき、腰痛の保存療法について改めて深く学ばせていただきました。

 

特別講演には福島県立医科大学医学部整形外科学講座准教授の二階堂琢也先生をお招きし、「痛み診療におけるMechanism Based Treatment実践の道しるべ ~Spine painDETECTを神経障害性疼痛の臨床へどのように活かすか~」という題でご講演いただきました。痛み診療におけるMechanism Based Treatmentは患者さんの疼痛の原因を正確に把握し、それに対する的確な治療を施すという考えです。わかりやすく言うと、ポケモンで相手の属性から、「こうかはばつぐんだ」となる攻撃を放つということだと、二階堂先生も例に用いていました。基礎から臨床まで豊富な研究データに基づき、いかにして疼痛の原因を理解しMechanism Based Treatmentを実践するかという、明日からの診療に直結する話題をご講演いただき、私たちも知識をアップデートすることができました。

 

今後も疼痛を訴えて受診される患者さんに真摯に向き合い、最適な治療を提供できるよう精進していきたいと考えました。