月別アーカイブ: 2019年4月

Akita Orthopedic Kampo Lecture(井上純一)

2019年4月26日Akita Orthopedic Kampo Lectureがホテルメトロポリタン秋田で開催されました。

一般演題では、つつみ整形外科の堤祥浩先生より、「整形外科開業医で頻用する漢方」と題してご講演いただきました。整形外科の日常診療で有用な漢方薬、ドーピング検査で禁止されている漢方薬などご教示いただきました。また、今村記念クリニックの田村康樹先生より、「外来での漢方使用の実際」と題してご講演いただきました。西洋薬が有効でなかった例でも、漢方薬の使用によって症状が改善することがあり、その適正使用についてご教示いただきました。

特別講演では、日本医科大学千葉北総病院の橋口宏先生より、「整形外科医にぜひ使ってほしい漢方処方~漢方薬が治療の手段を広げる~」と題してご講演いただきました。まず、気・血・水など基礎的な部分から、患者の状態の捉え方・考え方をご解説いただきました。続いて整形外科疾患の東洋医学的解釈、治療への応用などご教授いただきました。西洋薬では、慢性化した状態では効果が乏しい場合があり、漢方薬が著効することもあり、有効な選択肢の1つだと思いました。また、漢方薬使用時は副作用、アレルギー、既往歴、ドーピングなどに注意する必要があることもご教示いただきました。

どのご講演も明日からの診療に活かすことのできる内容ばかりで非常に有意義な機会となりました。今後の診療に積極的に活かしていきたいと思います。

最後になりましたが、ご講演いただきました先生方、ご参加いただきました方々、大変ありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

救急整形外傷シンポジウム(三田基樹)

3/22,23沖縄で開催されました救急整形外傷シンポジウム(EOTs)に参加したため報告いたします。

本教室からは野坂光司先生,湯浅悠介先生,長幡樹先生,東海林諒先生,三田基樹が参加してまいりました。

 

このシンポジウムは脊椎・四肢・体幹に関する整形外傷全てを網羅した会で、二日間各分野に関して様々な講演・発表を聞くことができました。

骨盤輪・寛骨臼骨折に関して岡山大学野田教授よりご講演いただきました。主に手術のポイントについてのお話でした。まだ見た事もない手術ですが、そんな私にとっても熱いものが湧き上がるような孤高のレベルの手術なのだと感じました。

多発外傷の際、複合臓器損傷を認めることが多いと思われますが、頭蓋内損傷の管理について日本医科大学横堀先生よりご講演いただきました。頭蓋内圧・脳保護目的の体温管理・外傷に伴うてんかん発作に対する適正な治療など、全身管理の点からも非常に勉強になる内容でした。

 

私は「多発外傷マネジメントの考察」として、多発外傷における初期治療・内固定のタイミングなどについて報告いたしました。以前は全身状態の改善を十分に待ち最終固定を行うところを、いくつかの基準を満たせば早期内固定可能といった内容です。このstrategyを自分自身の診療に活かしていこうと思います。

 

その他、様々な発表から感じたことは、骨粗鬆性低エネルギー外傷が徐々に増えてきている事、軟部組織/Flapの知識は必須であること、血管吻合の技術はもはや血管外科だけでは無く整形分野でもあることです。

 

外傷治療は急性期の全身管理やダメージコントロールor早期内固定といった判断から、どのようにandいつ軟部や骨折治療を行うかといった判断を迅速に決定していく学問だと思います。その点、本教室の「若手のうちからマイクロ/イリザロフの技術を学ぶ」教育方針は外傷治療に必須知識であり、本当に恵まれた環境にいると感じました。1人でも多くの外傷患者を救命/救肢し、報恩したいと思います。

このような貴重な機会をいただいたことを、心より感謝申し上げます。

第32回日本創外固定・骨延長学会(三田基樹)   

 

3/1~2にかけて2日間、当講座主催のもと第32回日本創外固定・骨延長学会が開催されたため報告いたします。

 

今回のスローガンは「IlizarovとMicrosurgeryの融合」でした。開会前にシンポジウムが開催されIlizarovとMicrosurgeryの在り方について議論されましたが、朝9時とは思えない程に盛り上がり、熱い討論と共に開幕しました。

初日の特別講演では獨協医科大学埼玉医療センター大関覚教授より下肢機能再建のための創外固定についてご講演賜りました。秋田大学Ilizarov法グループ(AIMG)のadviserとしてもお世話になっている大関教授のご講演は目から鱗で、術後早期より全荷重可能なIlizarovを用い患者様の生活をより豊かにする、愛情に溢れた内容でした。

2日目には湘南鎌倉総合病院外傷センター土田芳彦先生より重度四肢外傷についてご講演賜りました。重度四肢外傷のstrategyを提唱された土田先生のご講演は、骨折固定と軟部治療の共存の重要性についてであり、スローガンの通りIlizarovとMicrosurgeryの融合した瞬間であったと言っても過言ではないと思われました。

2日間に渡り、外傷急性期から感染症例のsalvageまで非常に幅広い内容の報告・講演ばかりで、充実した内容の学会でした。

 

何より今回特筆すべきは、全222演題と過去最多演題数であったことだと思います。

かつてない程の盛り上がりであったと多々ご評価頂き、本学会に主幹として携われた事を誇りに感じました。また、秋田のIlizarov治療が全国的に有名であることも実感出来、ここまでAIMG(Akita Ilizarov Method Group)を築き上げて来られた島田教授・大関教授・野坂講師の力を、目に見える結果として感じ取ることが出来ました。私自身、AIMGの一員として秋田のIlizarov治療に少しでも貢献できるよう精進して参ります。

 

最後に、本学会を成功に収められたことに感謝し締めとさせて頂きます。

第48回日本脊椎脊髄病学会 (工藤大輔)

平成31年4月18日〜20日、パシフィコ横浜で開催された第48回日本脊椎脊髄病学会学術集会(波呂浩孝会長)に参加しました。

秋田からは16題の発表があり、手術関連からサルコペニア、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、検診など多岐にわたる演題の発表がありました。特にトピックスのLIFやサルコペニア、ロコモに関して議論が活発で、背筋運動、ビタミンDに関する質問も多かったと思います。

講演はいずれも大変興味深く、プログラムの関係上、すべてを拝聴することはかないませんでしたが、私個人としては、札幌医大神経再生医療学、本望教授の「脊髄損傷患者に対する再生医療の実際」がもっとも興味深いご講演の一つでした。会場は立ち見が出るほどの盛況で、日本中の注目の高さがうかがえました。従来、重度の脊髄損傷は治らないという認識でしたが、本望教授がご研究された自家骨髄間葉系幹細胞を経静脈的に投与する方法は、すでに薬価収載されることも発表されている新しい脊髄損傷の治療法です。ご講演では、脊髄損傷および脳梗塞に対する本薬の治療効果を示す数々の動画がご紹介され、比較的投与の直後から手足が動き、喜ばれる患者さんの姿が大変印象的でした。

秋田は日本でもっとも高齢化している地域であり、秋田発の研究が急務であると思います。今後もオール秋田で全国に向けて情報を発信していければと思います。

第62回日本手外科学会学術集会(齋藤光)

2019年4月18、19日に札幌市の札幌コンベンションセンターにて、第62回日本手外科学会学術集会が開催されました。本会の学会長は北海道大学の岩崎倫政教授で、 “Be Ambitious, Be Innovative”のメインテーマのもと、フロンティア精神あふれるシンポジウム、パネルディスカッションが行われました。
Akita Hand Group(AHG)からは6演題が採択され、メンバーがそれぞれ発表してまいりました。千馬誠悦先生からは「陳旧性手指PIP関節側副靭帯損傷に対する装具療法」、伊藤博紀先生からは「秋田大学整形外科関連病院における橈骨遠位端骨折症例数の調査」、白幡毅士先生からは「手指関節拘縮に対する創外固定器による関節受動術」、加賀望先生からは「RA手関節障害に対するSauve-Kapandji法施行後の検討」と「3Dプリンターを用いた手関節装具の作成」、そして私からは「秋田大学整形外科関連病院における橈骨遠位端骨折手術患者の骨粗鬆症治療」について報告させていただきました。手外科分野の手術療法は、手関節鏡の発達とともに進化しており、TFCC損傷や母指CM関節症、リウマチ肘の滑膜切除などは今後、AHG若手メンバーが習得すべき手術手技と思われました。マイクロサージャリーとともに、手関節鏡でも我々はスキルアップする必要があります。

また学会翌日の4月20日には学会主催の春季手外科研修会に市立大森病院の湯浅先生と参加してきました。アドバンスな内容が多く、大変刺激的で最先端の講義を聞くことができました。私事ですが、昨年も本学会に参加しましたがその時は演題発表はありませんでした。次は演題発表できるようにという目標を立てていましたので、それが達成できたことは一つ嬉しく思います。継続して学会で報告できるように、また日整会や将来的には海外学会での発表、英語論文投稿ができるよう、AHGとしてこれからも活動していきたいと思いました。本学会で得られた知識を臨床へ活かせるように、明日からまた精進して参ります。

第63回日本リウマチ学会総会・学術集会(河野哲也)

平成31年4月15日〜17日、国立京都国際会館、グランドプリンスホテル京都で開催されました、第63回日本リウマチ学会に参加しました。

国立京都国際会館は1997年に京都議定書が採択された場所であり、とてもとても広い会場でしたが、それでも会場が狭く感じるくらい多くの参加者で活気にあふれていました。

秋田からは8題発表があり、その中で市立秋田総合病院の柏倉先生は「今直面しているリウマチ足の問題への対応」と題したシンポジウムのシンポジストとして、リウマチ患者の足関節周囲骨折に対するイリザロフ創外固定の有効性についてご発表されました。足関節周囲骨折は軟部組織トラブルが危惧されますが、リウマチ患者はその危険性はより高くなり、さらに骨粗鬆症による骨脆弱性が問題となります。イリザロフ創外固定はまさにその問題点に対応できる手術方法であり、その有用性を改めて強く感じました。北秋田市民病院の加賀望先生は,「RA手関節障害に対するSauve-Kapandji法施行後の検討」で口演発表されました。Akita Hand Groupのデータを使用しX線学的に評価し、SK法の有用性および今後のBio製剤使用下での可能性についてご発表されました。

その他にも多岐にわたるセミナーや発表があり、大変勉強になる学会でした。

明日からの診療につなげていきたいと思います。

 

秋田大学 河野哲也