第5回日本重度四肢外傷シンポジウム(JSETS)(三田基樹)

 

2018年7月21,22日、東京で第5回日本重度四肢外傷シンポジウム(JSETS)が開催されました。秋田大学からは伊藤博紀先生、谷貴行先生、野坂光司先生、白幡毅士先生、湯浅悠介先生、東海林諒先生、自分が参加いたしました。

 

1日目は「young surgeonによるfix and flapの今」のシンポジストとして白幡毅士先生のご講演から始まりました。御自身が経験された遊離・有茎皮弁や血管壁つき腓骨移植症例の話から、福島県立医科大学 川上亮一先生の手術を見学された時の話を御講演いただきました。特に、秋田で皮弁文化を根付かせる為には主治医だけでなく診療チーム全体で支え合う事が必要である事を力説されており、白幡先生の熱い気持ちがフロアに伝わる非常に感動する御講演でした。

午後には特別企画として野坂光司先生のシャッフルディベートがありました。「外傷後の骨再建(Masquelet法vs骨延長)」のディベートで、野坂先生はMasquelet法サイドで御講演されました。日々の診療で骨延長をされているからこそ分かる患者・医療者のストレスフルな治療面を交ぜつつ、Masquelet法の特徴である手術と共に治療が完了するメリットを含め御講演されておりました。ディベートの最後に“55歳男性 骨欠損を伴う脛骨骨幹部開放骨折”に対しMasquelet法と骨延長どちらを選択するか議論になりました。フロアの印象としては全荷重可能であり早期帰宅/社会復帰が可能である点からIlizarovによる骨延長に軍杯が挙がった印象でした。

白幡先生・野坂先生、貴重な御講演ありがとうございました。

その他の講演では、重度軟部損傷・開放創に対するNPWTの適切な使用法、局所軟部組織及び骨髄の感染制御目的に抗菌薬の高い局所濃度を保つiSAP/iMAP、Gustilo3C阻血四肢をサルベージするshut(TIVS/CVS)など非常に勉強になる内容でした。特にiSAP/iMAPを今回初めて知った私としては目から鱗の治療戦略でした。

 

2日目は主に皮弁に特化した症例報告とシンポジウムでした。中でも遊離皮弁術後管理の静脈鬱血モニタリングとして経皮的PaCO2が鋭敏という講義は新鮮でした。不良flapは経過を追う選択肢は無く、「術後、皮弁に添い寝する」事に加え早期判断・早期対応の重要性を再認識しました。

 

Gustilo3B,Cといった重度外傷は非日常的ですが、正しいストラテジーに則ったマネージメントで治療しないと温存出来る患肢を失う結果に繋がります。Ending lectureで土田芳彦先生は、この様な事態を防ぎ患者ADLを守る為には「日々の知識・技術の準備が重要」と仰っており心に響きました。秋田大学整形外科の先生方がここまで築き上げて来られた伝統と技術を絶やさぬ様これからも精進して行こうと強く感じた学会でした。