2018年度先進医療及び医療サービスに関わるプロジェクトコンペのご報告(千田聡明)

平成30年11月21日,本道40周年記念会館,講堂にて2018年度先進医療及び医療サービスに関わるプロジェクトコンペが開催され,先進医療部門で栄えある最優秀賞をいただきました.このコンペは「先進医療に発展・実用できる基礎研究・臨床研究」および「本院における医療サービス等においての取り組みや成果の期待出来る事柄」について発表し,各々の部門で優秀と評価された者,又は部門に対して表彰を行い,研究費等の賞金を贈呈するものです.対象職種は医師,看護師,コメディカルスタッフ,事務職,外部委託事業者とされ,今回は先進医療部門に7題,医療サービス部門に11題の応募がありました.

 

私は開発チームを代表し,「卓上型上肢ロボット支援リハビリテーション機器の開発」をテーマに,先の東日本整形災害外科学会にてお披露目した卓上型上肢ロボット支援リハビリテーション機器,通称リハビリマウスの開発プロジェクトについてプレゼンテーションを行いました.リハビリマウスの基礎となる技術は,2006年から秋田大学理工学部,秋田工業高等専門学校との医工連携で行った汎用ロボットアームPA10とセンサー技術を用いた上肢用ロボット研究から培われたものです.当時から上肢用ロボット支援リハビリテーション機器は高性能でしたが大きく重いため,使用環境や目的が限られる短所がありました.当然,装置の小型化が望まれ,私たちは2013年から,持ち運びが可能でテーブル上で使用できる,小型,軽量な機器の開発を始めました.この機器は,円板状の自動掃除機に似た外観であり,前後左右に回転するオムニホイールの四輪駆動とすることで,平面上を全方向に移動できました.また,機器を動かそうとする患者の力を検知し,足りない分を介助したり,逆に邪魔するような外乱を加えたりすることを可能にしました.それにより,この機器を動かすことで上肢の運動練習ができるようにしました.また,AR(拡張現実)技術を組み込み,機器の位置を把握できるようにしたことで,運動練習に加え,運動の評価を可能としました.そしてこのような技術を基に,無線で動作し,先進性と馴染みやすさを両立させて練習の意欲をかきたてるデザインに仕上げたのが今回,お披露目した新型リハビリマウスです.

 

この無線タイプの新型リハビリマウスは,秋田大学理工学部,秋田工業高等専門学校はもちろん,秋田公立美術大学,秋田県立大学,さらには設計開発を専門とする秋田未来株式会社,電子応用機器を専門とする株式会社 Kエンジニアリングなど県内民間企業とチームを組むことで実現できました.コンペの審査においては,このようなオール秋田で臨んだプロジェクトの背景,機器の機能と独創性,製品化の進捗状況や実現可能性の高さなどを高くご理解いただいたものと考えます.今回の受賞を励みとし,賞金をもとにさらに機器の発展を図りたいと考えます.また,コンペ参加の機会を与えて下さいました島田洋一教授,ともに機器の開発に邁進したチームの皆様に改めてお礼申し上げます.どうもありがとうございました.