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第17回日仏整形外科学会学術集会(木島泰明)

2016年11月25-26日の2日間、ラヴィール岡山と香川県直島のベネッセハウスにて、第17回日仏整形外科学会学術集会が開催されています。秋田からは木島泰明が参加致しております。

我が国において医学は、明治以降のドイツ医学、第二次大戦後のアメリカ医学を主流として発展してきましたが フランスは近代整形外科発祥の国であり、古くから大きな業績が見られ、Orthopédieという言葉が誕生したのもフランスであり、アングロサクソン系のものとは異なった天才的な独創性がある事は世界的に認められています。一度フランス医学を経験したものにとって、その独特の考え方は深く感銘を受けることから、かつてフランスに留学経験を持つ先生方が提唱して1987年に第1回の日仏整形外科学会が神戸にて、七川歓次先生(滋賀医科大学整形外科)を会長に行われました。

現在、日仏整形外科学会の会長は、金子和夫・順天堂大学教授ですが、今回の学会長は、藤原憲太先生(大阪医科大学)と青木清先生(旭川荘療育・医療センター、岡山大学)の御両名です。

第一日目はラヴィール岡山にて、帰朝報告や股関節・脊椎の教育研修講演、小児やハンド、股関節の一般演題の発表もワインの試飲をしながら和やかな雰囲気で行われました。参加されている先生方の専門領域としては、股関節が多いですが、次いで多いのは脊椎、肩、膝、小児、手外科でした。同会場でのウエルカムパーティーでも岡山ならではの料理を満喫することが出来ました。

二日目は朝、岡山をバスで出発し、直島入りをします。直島はアートの島として日本よりも海外での知名度が高く、3年に一度行われる瀬戸内国際芸術祭の中心です。直島では、DDH・膝・スポーツの教育研修講演や脊椎・膝の一般演題だけではなく、今後の国際留学や交流のヒントとなるような国際人4人による「地球人シンポジウム」なども企画されており、通常の学会とは違った、とても楽しい雰囲気で進行していきます。

一昨年、第1回から第7回までの学術集会の会長を務められ、初代のこの会の会長でもあった滋賀医科大学名誉教授の七川歓次先生が亡くなられました。この先生のお名前を残そうということで、今年の学術集会における帰朝報告の中で最も印象に残った帰朝報告が七川歓次賞(最優秀帰朝報告賞)として表彰されることとなりました。そういうこともあり、今年はなんと12演題もの帰朝報告がエントリーされましたが、参加者全員の投票によって決定された栄えある第一回七川歓次賞に私、木島泰明が選ばれました!これもひとえに私にフランス留学を薦めて頂いた島田教授をはじめ、留守中大変ご迷惑をおかけするにもかかわらず快く留学に行かせていただいた同門の先生方のおかげです。本当にどうもありがとうございました。

日仏整形外科学会学術集会(SOFJO: Société Franco-Japonaise d’Orthopédie)は2年に1回の開催で、毎回、日本の各地で行われますが、このほかに日仏整形外科合同会議(AFJO: Association France-Japon d’Orthopédie)も2年に1回開催されており、SOFJOとAFJOが交互に行われるので、毎年、日仏の整形外科医の交流の場が持たれています。AFJOは日本開催とフランス開催が交互に行われており、昨年のAFJOはフランスのサンマロという世界遺産モン・サン・ミシェルの近くで開催されました。そして来年のAFJOは船橋整形外科の老沼和弘先生と千葉大学の高橋和久教授を会長に世界遺産・日光東照宮社務所にて開催されます。2017年5月12-13日の2日間です。SOFJOもAFJOも、全国の先生やフランスの整形外科医と(フランス語ではなく)英語でディスカッションができる貴重な場です。英語でのプレゼンやディスカッションは場数(ばかず)が大事だと思うので、フランス整形外科に興味を持ってくれた先生、ぜひ一緒に参加しましょう。

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第41回日本足の外科学会に参加して (雄勝中央病院 柴田暢介)

2016年11月17~18日, 奈良県の奈良春日野国際フォーラム甍にて第41回日本足の外科学会が開催されました. 秋田からはAFGメンバーの柏倉先生, 野坂先生, 千田先生, 冨岡先生, そして私の5人で参加して参りました.

基調講演では, 秋田にイリザロフを教えていただいた現理事長の大関覚教授が, 「日本足の外科学会の未来に向けた今日の取り組み」という演題で, まだまだ会員数の少ない足の外科学会をどう盛り上げていくかということに関してご講演されました. また特別講演では, 国際足の外科学会(IFFAS)の初代理事長で, 奈良県立医科大学の名誉教授でいらっしゃる高倉義典先生が, 「日本足の外科学会が国際交流ではたした役割と今後の展開」という演題で, 日本と国際足の外科学会の歴史と今後についてご講演いただきました. 恥ずかしながらIFFASの初代理事長が日本人の先生であったことをこのときはじめて知り, 誇らしく思いました.

そして今回, 秋田からの発表では, 千田秀一先生が優秀ポスター賞を受賞されました! タイトルは「超音波を用いた足関節鏡 anterolateral portal の解剖学的位置関係」で, 今ホットな話題を扱った臨床にもすぐ生かせる素晴らしいご発表でした. 秋田大学初の快挙です. 本当におめでとうございました. また, 野坂光司先生も今までの輝かしいご業績により, 今回新たに学会の評議員になられました. おめでとうございました.

今回の千田先生の受賞を機にこれからも足の外科を盛り上げていきたいと思います.

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東北整形災害外科学会トラベリングフェロー in 韓国 (河野哲也)

 2016/10/18から2016/10/29まで参加させていただきました、東北整形災害外科学会トラベリングフェローin韓国のご報告をさせていただきます。

今回は、過去に受賞された他大学の先生を含め、秋田大学は工藤大輔先生と私の2名、東北大学1名、新潟大学2名、山形大学1名と総勢6名での参加となりました。

10/19から10/22には、仁川にて日整会(JOA)総会にあたる、第60回韓国整形外科学会(The 60th Anniversary Congress of the Korean Orthopaedic Association)に参加しました。学会はKorean sessionとEnglish sessionに分かれEnglish sessionを中心に拝聴しましたが、どのsessionでも活発な討論がかわされ驚きました。また、今回は第60回記念大会ということで、日本の各病院から著名な先生が招かれ、Invited Lectureとして多数のご講演を拝聴することができました。また、記念セレモニーでは、仙台西多賀病院脊椎脊髄疾患研究センター長 国分正一先生より「JOAとKOA交流の歴史」についてご講演があり、その歴史は古く、かつ強いつながりを初めて知ることができました。

10/22ソウルへ移動し10/24から10/28には、Clinical attachmentとして、私はKyung Hee University Hospital at Gangdong、工藤先生はSamsung Medical Centerにて手術を中心に見学させていただきました。Kyung Hee Universtiy Hospital at Gandongは、ソウル市の東に位置する800床ほどの病院です。脊椎センターがあり、成人脊柱変形に対する手術を多く行っている病院ですが、周辺地域の外傷患者も多く受け入れる病院です。そのため手術は毎朝8時入室、毎日整形外科だけでも10例以上の手術が行われており、同年代のレジデント医師が休む間なく働いている姿が印象的でした。手術室には昼食が準備されていましたが、当たり前のようにキムチがあり、カップラーメンは辛ラーメンと、さすが韓国!という光景でした。

今回のトラベリングフェローで国内外の先生と交流を深められた事は大変貴重な財産となりました。誠にありがとうございました。

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第37回東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞の報告(野坂光司)

このたび,2月6日に仙台にて開催されました第37回東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞を受賞いたしました(演題名『難治性骨折における骨質マーカーの意義:野坂光司 宮腰尚久 山田  晋 本郷道生 永澤博幸 粕川雄司 齊藤英知 木島泰明 土江博幸 島田洋一』).この会は佐藤光三名誉教授が会の立ち上げから携わっており,我々秋田大学整形外科学教室にとって大変縁の深い学会です.留学から戻り,今回久しぶりに参加させていただきましたが,大変勉強になりました.

発表内容は,早急に論文化すると宣言しますので,ということで,ここでは省かせていただき,自分の尻を叩きたいと思います.

島田洋一教授,宮腰尚久准教授のご指導のもと,A-BONEの一員として,ますます精進いたします.さて東北骨代謝骨粗鬆症研究会の優秀演題賞のA-BONEの獲得率,かなり高いのではないでしょうか.去年,一昨年は田村先生,木下先生が受賞したと記憶しておりますし,私も今回で3回目の受賞となりました.A-BONEの勢いを感じます.私,近いうちに偽関節と仮骨延長の動物実験も頑張って,来年は基礎でも発表したいと思っております.今後ともご指導よろしくお願い申し上げます.

賞状

 

第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会を終えて(木下隼人)

余寒厳しき折柄,皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます.

この度,2015年2月7日に宮城県仙台市で開催された第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会において,今村記念クリニックの田村康樹先生共々優秀演題賞を頂き,私におきましては分不相応なため,恐縮であるとともに,望外な喜びを感じている次第であります.この成果を皆様にご報告致しますとともに,今年度の研究会で諸先生方より学ばせて頂いたことを簡単にではございますがご報告させて頂きます.

演題数は,基礎研究より6題,臨床研究より10題の計16題でした.歯科口腔外科の先生からは,ビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ),産婦人科の先生からは,骨系統疾患の出生前診断について,外科の先生からは,副甲状腺機能亢進症術後の骨量変化について,その他非常に興味深いお話を拝聴致しました.整形外科領域では,CKD-MBD(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder)との関連で,田村先生がエルデカルシトール投与患者を腎機能別に血中CaおよびPを比較検討した内容を御報告されました.また,経口ビスホスホネート製剤反応不良例でイバンドロネートに変更した際,骨密度や骨代謝マーカーの改善が期待できるという興味深い研究をされている方もおりました.

一般演題終了後,ミニレクチャー,特別講演と続きました.ミニレクチャーでは,東北大学腎・高血圧・内分泌学の森本先生により,内分泌異常による続発性骨粗鬆症について御講演頂きました.クッシング症候群や下垂体機能低下症などの内分泌疾患は,ともすると診断に到るまで時間を要し,骨代謝に対する視点を欠いてしまう症例があり,骨粗鬆症が重度に進行するまで見逃される危険性があるので,原疾患に対する精査・治療と併行して骨粗鬆症の治療を行わなければならない,という内容でした.特別講演には,長崎大学副学長の伊東昌子先生が演台に立たれ,皮質骨の放射線学的評価法について拝聴致しました.語弊を恐れずに大雑把に述べさせて頂くと,今までは骨に関しては海綿骨の評価が主流であったのに対し,近年では,皮質骨評価も注目されつつあるということでした.皮質骨微細構造の評価をHR-pQCTで行い,皮質骨の層を外側(皮質骨最表面),内側(海綿骨側),中央(皮質骨最表面と海綿骨側の間)に分けて評価.骨孔を各層で確認し,皮質骨内側の骨孔がいくら多くても骨強度には影響しないのに対し,皮質骨中央の骨孔の数が多いほど,骨強度は弱くなるという内容でした.今後,本邦においても次々とHR-pQCTが導入される見込みで,皮質骨微細構造の放射線学的評価が様々な施設で可能になるのではないかと,将来の展望について御教示頂きました.しかし,測定箇所が橈骨・脛骨の遠位部のみであるため,その結果が他の骨に対しても当てはめられるのか,という課題もあるようでした.最後に,このような発表の機会を与えて下さった島田教授ならびに宮腰准教授,粕川講師,その他ご協力を賜りました先生方に,厚く御礼申し上げます.

東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞を受賞して(田村康樹)

優秀演題賞を受賞して

この度、2/7(土)に仙台で行われた第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会の臨床部門にて優秀演題賞をいただきました。この会は、今年で36回目ということで歴史があり、佐藤光三名誉教授が会の立ち上げから今でも元気に参加されているという由緒ある会でもあるため、その恩師の前でこういう賞をいただけたことを大変うれしく思います。

元々この会はビタミンD研究会、であったこともあり、4年前に新たに発売された活性型ビタミンD製剤であるエディロールを頻用する私としては、一度症例をまとめて報告してみよう、というのが発表に至るきっかけです。昨年は、「エディロール投与例における血中および尿中Ca値の変動について」という演題を発表しました。エディロールを投与した143例(平均年齢78.3歳)について、血中および尿中Ca値を測定し投与前の値と比較すると、ともに有意に増加(正常範囲内)しており、結果エディロールは腸管からのCa吸収率を確実に上昇させていることが示唆されるため、骨粗鬆症治療薬として有用である、という内容です。しかしながら、一方でCaが高値となることが血管の石灰化につながらないのか、特に腎機能の低下した高齢者ではどうなのか、という疑問が残ったため、今年は長期(2年)にわたりフォローし得た患者のCa値に加え、リン値、および腎機能(eGFR)について調査しました。演題名は、「エディロール投与例における血中Ca/P値およびeGFRの変動について」です。エディロールを投与し2年以上経過した74例(平均年齢78.5歳)について、6ヵ月ごとに血中Ca値、P値及びeGFRを測定すると、血中Ca値は投与前と比べ有意に増加しそのまま高値を保っており、血中P値は内服前後で大きな変動はありませんでした。eGFRは6ヵ月時で有意に低下しましたが(正常範囲内)、その後大きな変動はなく経過とともに漸減しました。また、経過中一度でもeGFR 60未満を示したのが74例中36例(48.6%)あり、36例の血中Ca値は正常群と比較し安定せず高値を示す傾向にあった、という内容です。

近年CKD-MBD (Chronic Kidney Disease – Mineral and Bone Disorder.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)という概念が提唱されています。Ca/P値などの異常がやがて血管の石灰化など生命予後に関わるというものです。今後も漫然とエディロールの投与を続けるのではなく、調査を続け、骨粗鬆症の治療につなげていきたいと思っています。最後になりますが、骨グループをまとめ、いつも御指導いただく宮腰准教授、そして、自分に活躍の場をくださる島田教授に感謝し、受賞の言葉とさせていただきます。今後ともよろしくお願いします。

今村記念クリニック 田村康樹