第86回秋田書道展一般一科 「特選」を受賞して(齊藤英知)

この度、2023年10月28日から11月1日まで第86回秋田書道展(秋田魁新報社主催)が秋田市中通のアトリオンで開催されました。

秋田書道展は県内最大の書道展で、小学生から一般までを対象としており、書道展は学生と一般の部で応募総数は1984点。入賞220点、入選120点が審査により決まりました。一般には一科と二科があり、ざっくり言うと作品の紙の寸法の違いです。一科の方が大きく(横2尺縦8尺:天井からぶら下げるサイズ)、二科はいわゆる条幅サイズ(掛け軸にちょうどいいサイズ)です。比較的決められた約束の範囲内で作風を出せる「自運漢字」と古典を似せて書く「臨書漢字」があります。その他にも「自運かな」「臨書かな」「調和体(近代詩文)」「篆刻・刻字」などのジャンルもあります。賞については、一科では上から、「推薦」「特選」「秀作」「褒状」「入選」があり、「推薦」を3回受賞すると書道の先生を名乗ってもいいとされている「無鑑査」として出品が許されます。最高賞である「魁星賞」はこの「無鑑査」として出品された作品から審査され2点が選出されます。「魁星賞」を3回受賞すると「招待」に格上げになります。

2021年に秋田大学整形外科書道部の初代部長を拝命し、2021年9月から瀾の会という教室に通い、長沼雅彦秋田大学名誉教授のご指導の下、書道のいろはを習い始めました。2022年1月に行われた「第44回瀾の会書展」で、人生初の書展に出品し、書道部としての活動の第一歩を記したことを整形外科ブロクでご紹介させて頂きました。その後、地道に活動を続け、昨年(2022年)の第85回秋田書道展では「秀作」を受賞。今年(2023年)に入って6月の第65回秋田県美術展覧会では特賞(最高賞)を受賞し、県内の書道家の先生がたから熱い応援とプレッシャーをかけられる中の今回の出品となりました。私は昨年同様に一般一科「自運漢字」というカテゴリーに挑戦しました。題材は、「四体書勢」という書論です。Wikipediaによれば、『四体書勢』(したいしょせい)は、西晋衛恒撰。古文・篆書・隷書(八分・行書・楷書の3書体を含む)・草書の4書体について名筆家を列挙したあとに、各書体の起源・書法・逸話などの内容を記述したもの。草書が篆書・隷書と並んで一体をなし、重要な書体としての地位を確立していることが分かる。また、曹喜邯鄲淳韋誕蔡邕の漢代の名人の書の特徴と優劣を論じている[28][38][67][70][71]と記載されています。今回も、長沼先生にご指導戴き、隷書として作品といたしました。作品としては以下となります。

令隷人佐書曰隷字漢因行之濁符

印璽幡信題署用篆隷書者篆之掟

也上谷王次仲始作楷法

四体書勢の一(節) 英知書

今回から主審査の先生が交代になり、石飛博光さんになりました。石飛さんは、北海道出身の方で、東京学芸大書道科で学ばれた大家で、「詩文書」の創作に特に尽力されてきた先生です。本書展では「調和体」というジャンルに当たります。受賞作も行草書、詩文書風の作品が並ぶなか、隷書での受賞は自分一人でした。これは昨年の受賞された作品と特徴を異にしており、主審査員が変わるということは、受賞作の傾向もずいぶんと変わることを実感しました。そのような中でも、「特選」に選ばれたということで、逆に展示場では目立っておりました。今回は、賞状ならびに盾も授与されております。

秋田大学整形外科は、島田洋一前教授のご指導の下、スポーツに秀でた選手が数多く入局してくれ、その情熱で全国に誇れる業績を出し、非常な発展を遂げて参りました。書道部顧問でもある宮腰尚久教授の下では、さらなる発展と人材育成、教育も兼ねて、整形外科開闢以来初となる文化部である書道部を立ち上げました。若手の新進気鋭の脊椎外科医の笠間史仁先生は、筆さばきがよくなると手術の電気メスさばきもよくなった「電気メスの先に神経が通った」と述べております。佐藤貴洋先生は、昨年の筆納め会に出席して、「一生懸命に字を書すことで、心が研ぎ澄まされる感じがして非常に良かった。」と述べています。参加者にとって書道との対峙の仕方はまさに多様性があり、我々秋田大学整形外科は、多様性のある医局として、意欲と好奇心に満ちた若手の先生方と一緒にこの整形外科という分野を盛り上げていきたいと考えております。

秋田大学整形外科書道部は、いつでもご興味ある先生方をお待ちしております。

表彰式の様子

中央:小松紫峯先生(高校のときに芸術の授業で書道を教えてくださった)と再会しました(30年ぶり)。高校の時に授業で書道を学んでいつか本格的にやってみたいという気持ちがどこかにあったのかも知れません。

右:嶋野青城先生(自運かな推薦受賞)。今回はダブル受賞。小松書道教室のエース書道家。