第52回秋田県脊椎脊髄病研究会 (木村竜太)

3月12日、第52回秋田県脊椎脊髄病研究会が開かれました。

まず、「研修医・若手整形外科医へむけた脊椎外科基礎講座」として、はじめに畠山雄二先生から「神経診察・理学所見の取り方」、実臨床でまず若手が覚えなければいけない点を詳細に、わかりやすくご説明いただきました。SHR(Scapulohumeral reflex)などは、実際の患者さんの動画を見ることで理解が深まりました。

次に「脊椎前方アプローチの解剖と術中の注意点」として頚椎を石川慶紀先生、胸椎を本郷道生先生、腰椎を粕川雄司先生にお話いただきました。現在改めてその必要性が認識されている前方アプローチですが、リスクのイメージが先立つところが難点と思われます。これらに対する対策を、解剖を含め詳細にお話いただきました。

ミニレクチャーは佐々木寛先生「化膿性脊椎炎の動向」です。高齢者の増加とともに、極めて一般的な疾患となっていますが、診断から治療まで系統だってレクチャーいただきました。保存療法が第一選択であることからも、整形外科医もより抗生剤の使用方法について学ぶ必要があると感じました。

一般演題は4題の発表がありました。その中から最優秀演題として斎藤光先生の「腰椎椎体感固定術における術中トラネキサム酸投与の有用性について」が選ばれました。斎藤先生は初期研修医ながら、質問にも適切に返答されており、堂々たる受賞でした。

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特別講演1が大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学准教授の寺井秀富先生「Midcervical central cord syndromeの病態と治療」です。初めて聞く疾患概念でしたが、その患者像を聞くと、今まで見た患者さんの中にも当てはまる方が複数いたように思います。1995年に初めて報告されたものですが、高齢化に伴い患者数が増加、今後は頸髄症の重要な一部と捉える必要性を感じました。前方固定術で不安定性を除くことで、良好な成績が得られるため、確実な診断、治療を行いたいです。

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特別講演2が和歌山労災病院脊椎センター長の安藤宗治先生「術中脊髄機能モニタリングの必要性と留意点」です。安藤先生は脊髄モニタリングの第一人者であり、秋田大学からも多数の医師が研修させていただいております。今回は各モニタリングの詳細な原理や方法を、実際の症例を交えながらご教示いただき、そしてmultimodalityの必要性を最後に述べていらっしゃいました。脊椎外科の発展とともに、高度脊柱変形に対する手術治療も積極的に行われる反面、その術後合併症の低減は課題の一つです。脊髄モニタリングは術後麻痺を回避するために必須の手段と考えます。より安全で確実な治療のためにも秋田県内での使用を増やしてまいります。

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