第53回 秋田県脊椎脊髄病研究会 (水谷 嵩)

2016年9月10日第一会館本館で第53回秋田県脊椎脊髄病研究会が開催されました。

まず初めに、研修医、若手整形外科医のための整形外科基礎講座vol.6として、今回は小児の脊椎疾患に焦点を当てたご講演をいただきました。秋田労災病院の木戸忠人先生からは日常診療で触れることの多い分離症について、診断のポイントや治療についてお話ししていただきました。秋田大学の粕川雄司先生からは腫瘍について、秋田大学での手術記録をもとに疫学的な内容や画像診断についてなど、文献的な考察を含めてお話しされました。同じく秋田大学の本郷道生先生からは側弯症について、診断から健診、フォローアップについてなど多岐にわたる内容をお話ししていただきました。

ミニレクチャーは今回の当番幹事の三澤晶子先生から神経筋疾患に基づく小児脊柱変形という内容でご講演いただきました。脳性麻痺やダウン症の脊椎疾患など、三澤先生の専門分野とも言える内容が中心で、過去の大変な症例なども御呈示いただき大変興味深かったです。

一般演題は4題で、どの演題も独自性が高く今後の診療につながる素晴らしい演題でした。秋田厚生医療センターの井上純一先生は仙骨脆弱性骨折の検討、秋田労災病院の阿部和伸先生は健常日本人における脊柱骨盤アライメントの基準値の計測、佐藤千晶先生は頚椎症性脊髄症に合併したRS3PE症候群の二例、秋田大学の鈴木真純先生は外側ヘルニアを合併した腰部脊柱管狭窄症の1例を発表されました。一般演題の中から最優秀演題賞に選ばれたのは秋田労災病院阿部和伸先生の発表でした。

特別講演1は順天堂大学整形外科准教授の米澤郁穂先生から『側弯症の診断と治療〜難治症例にどう対応するか』と題してご講演いただきました。20歳以降に側弯症手術を行った場合は出血や手術時間が増える傾向があり、なるべく思春期のうちにすべきだとお話しされていました。Lenke type 2 curveに対する側弯症強制固定術をもとにShoulder balanceの重要性について述べられており、遠位近位固定端の決定についても言及され、側弯症手術の治療計画の難しさを感じました。神経原性疾患に合併した側弯症の治療として、Chiari奇形を合併した側弯症では30度以下で大後頭孔減圧術を行なうべき、空洞症の残存例には要注意とのことでした。術後の合併症についてもお話ししていただきました。矯正を行う手術の際はやはりMEPは頻回にチェックし、脊髄血流障害の評価が不可欠のようです。

 

特別講演2 は関西医科大学総合医療センター整形外科病院教授の齋藤貴教先生から『脊椎手術におけるMISt手技 この十年の歴史と今後の展望』と題してご講演されました。齋藤先生からはMISt発足の成り立ちからお話ししていただき、脊椎小侵襲手術の歴史から学ぶことができました。小侵襲固定手術の必要性、脊椎固定術におけるパラダイムシフト、PLIFの小侵襲化の過程などについてご紹介いただき、MIS-TLIF やMantis手術手技は動画をご提示いただきました。MIS TLIFとPLIFの長期成績の比較についても自験例の結果をもとに小侵襲か手術の有用性をお話していただきました。椎間関節の温存、背筋群の温存がいい結果につながるのでは、とのことで今後より発展していく可能性を感じることができました。また、PPSの応用例について、感染や、腫瘍、外傷などに応用した症例をご提示いただきました。最後にOLIF、XLIFについて問題点も踏まえ現在の課題、今後の展望などをお話しいただきました。

今回も様々な演題で勉強することができ、今後の診療に役立つ研究会となりました。

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