第10回秋田県手外科研究会(湯浅悠介)

7月1日第10回秋田県手外科研究会が開催されました。

昨年に引き続き冨岡立先生から「腋窩ブロックを成功させるポイント」と題してレクチャーをいただいた後に、最新の超音波を用いながら、腋窩神経の描出を行いました。数年前から当研究会で、このハンズオンが行われており、現在超音波ガイド下神経ブロックは秋田大学整形外科若手医師の必須手技となるに至っております。超音波による描出を行いながら、日常診療での疑問などもざっくばらんに話せる、とても有意義な時間となりました。

一般演題は、6演題の発表があり、最優秀演題賞は「両側橈骨若木骨折に対し3Dプリンター装置を用いた1例」で北秋田市民病院の加賀望先生が受賞されました。骨折に対して、装具を3Dプリンターで作成するという、数年前までは想像もつかなかったことが医工連携により現実となってきている事実を知ることができました。知識のアップデートを怠らず、医療の新たな形にも順応していくことが求められていると感じました。その他の5演題もすべて勉強になるものばかりで、明日からの診療に生かしていきたいと思いました。

その後、白幡毅士先生から「日常診療で遭遇する手外科疾患の治療」と題してミニレクチャーをいただきました。普段よく遭遇する疾患を中心に、その症状や治療方法などをわかりやすくご講義いただきました。以前は保存療法が主流であったものが、手術療法が主流となっていたり、逆に手術をしないと治らない疾患であったものが注射などによる保存療法で高い治療効果が期待できるようになったりと、自分の古い知識が一掃される内容となっておりました。今回のミニレクチャーで勉強させていただいた内容をもとに、今後はより詳細に治療方針を説明し、積極的な治療介入をしていこうと思います。

特別講演は奈良県立医科大学手の外科講座の面川庄平教授から「手関節尺側痛の診断と治療-スポーツ外傷から変性疾患まで-」と題してご講演いただきました。手関節尺側痛というblack boxを系統立てて、わかりやすくご説明いただきました。TFCC損傷やECU腱鞘炎はもちろん、手根中央不安定症やLT関節不安定症といった稀な疾患も鑑別に挙げ、それに対しての圧痛点、誘発テスト、治療方法などをご教示いただき、非常に勉強になりました。外来では、いかにその訴えが何に由来するのかを導き出す診断力が求められるため、圧痛点や誘発テストの知識は極めて重要なものであることは明らかだと思います。今回学んだ知識を生かし、今後は一つ一つの理学所見から詰将棋のように診断を付け、適切な治療を行えるように精進していきたいと思います。面川教授、ご講演いただき誠にありがとうございました。