イギリス留学記 ~その2~ (工藤大輔)

12月30日ノッティンガムシティホスピタルからクイーンズメディカルセンター(QMC)行きのバスに乗る。宿舎のあるシティホスピタルはQMCの姉妹病院らしく、研修するSpine unitはQMCにある。バス停で待っていると高齢の男性に話かけられ、どこから来た?という質問以外は早口で何を言っているか全くわからなかった。QMCに着き、受付のおばさんに脊椎外来の場所を聞き、脊椎外来に向かう。脊椎外来でGrevitt先生の居場所を尋ねるがどうやらX線撮影室にいるとのことで、今度はX線撮影室に向かう。しばらく待つが忙しいのかなかなかお会いできない。そうこうしているうちに今度はオフィスに案内され、まずはIDカードを作ると言われ写真を撮影、カードがすぐに出来上がったが、その後またオフィスでしばし待つ。するとフェローの先生が来てくれて、Grevitt先生は今注射をしているとのことで、それが終わるまでお相手をしてくれた。Spine unitはこちらでいう医局のようなオフィスの他、カンファレンスルームと病棟が隣接しており、とてもアクセスが良さそうだった。年末のためかみんな暇そうで卓球をしたり、しゃべっていたりしていた。日本の医者より時間的に余裕があるのだろうか。午後になるとGrevitt先生の注射が終わったとのことで、オフィスに案内され、初対面。すごく感じの良い先生で、何を見学したいか聞かれ、deformityと答えると、今度院外での出張の手術もあるから、それに連れていって下さるとのことであった。この日はあいさつを済ませ、またバスに乗って帰宅した。

12月31日、日本ではたいていの病院は休みであるが、この日は手術があるとのことで、朝の7時すぎに出勤した。ちなみにまだ空は真っ暗で月が出ていた(写真4)。 この時期夜が長いが、夏になると逆に日が長くなるらしい。この日の手術はT10-Iliacまで固定された高齢女性のPJKに対する固定延長手術であった。術式は緩んだT10のスクリューを抜去し、T4,5をフック、T6,7椎弓根スクリューでアンカーを作成し、コネクターでロッドを連結するというものであった。胸椎のスクリューは刺入点を小リュエルで骨切除し、フリーハンドでプローブ(pedicle finderと呼んでいた)を挿入、デプスゲージで長さを測って挿入するというものであった。コネクター部は力学的に弱いとのことで「川」の字に別のロッドを横止めで連結して補強していた。閉創前に、大量のイソジンで創内を洗浄し(衝撃的)、バンコマイシンの粉末を散布していた。手術を終えると術後X線の撮影はなく、抜管後、足の動きを確認することもなく、患者さんは退室していった。その後、フェローの先生に休憩室に連れていってもらい、果物やパンを食べ、しばらくおしゃべりをしてから、患者さんの元に向かった。幸い足はちゃんと動いていたが、動かなかったらどうするのだろうと心配になった。

この日の夜は、Grevitt先生のご家族にご招待され、ディナーにご一緒させていただいた。とても気さくな良い先生で、宿舎のことを心配してくれたり、今後を研修のことを気遣っていただいたりした。食事を終えるとノッティンガム中心地の散策に連れて行ってもらった。新年を祝う若者と音楽があふれ、花火も上がり、イギリスのNew yearの雰囲気を味わえた。

(写真4)

写真4