留学報告㉕リハビリ専門医(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はリハビリ医について

日本のリハビリテーション医の定義は「病気や外傷の結果生じる障害を医学的に診断治療し、機能回復と社会復帰を総合的に提供することを専門とする医師(日本リハビリテーション医学会HPより)」です.

米国のリハビリテーション医はPhysical medicine and rehabilitation (PM&R)の専門教育を終了した医師(Physiatrist)であり,「物理医学とリハビリテーション(PM&R)の医師は、脳、脊髄、神経、骨、関節、靭帯、筋肉、腱に影響を及ぼす様々な病状を治療する(PM&R HPより)」と定義されています.

日米の違いは,日本は病気や外傷の結果の障害に対する治療を目的にしているのに対し,アメリカでは筋骨格神経系の保存療法とリハビリテーション含めた治療を行います.このため,アメリカのリハ医 ≈ Physiatristの治療範囲は,日本の整形外科の保存療法もその範囲に含まれます.そのためリハ医 ≈ Physiatristといっても,入院患者を専門に診るFung先生のように内科系による医師や,長尾正人先生のようにneedle specialistとしてinjectionを中心に外来専門に行う医師や,Lisa先生のように脳梗塞痙性麻痺に対する,テトロドトキシンinjectionや,装具処方など幅広く行う医師,Kazuko先生のように脊損を中心に診療する医師など,医師の意識や勤務されている病院のニーズなどで決まり,典型的な勤務スタイルはありません.しかし,全員に共通するのはそのバックグラウンドにPM&RのレジデンシーというPM&Rを基礎から学ぶ教育プログラムを受けていることで,どの分野に進んでも問題ないような下地ができています.

さらなるSubspecialityフェロープログラムとしてNeuromuscular medicine,Pain medicine,Pediatric rehabilitation medicine,Spinal cord injury,Sports medicine,Brain injury,Hospice and palliative medicineがあり,より専門性の高い治療領域に進む医師もいるということです.

日本では回復期リハビリテーション病棟の急激な増加にともない,リハビリテーション専門医の不足が指摘されています.

元来リハビリテーション自体の概念が幅広いものであり,医学的リハビリテーションだけを絞っても,今後Subspecialityが必要になることは日本でも十分に考えられます.逆に言えば,もともとSpecialtyを持った他科からの参入される医師が力を発揮しやすい科と言えるかもしれません.新専門医制度が始まり,そのプログラムの中で総合的なリハビリテーションをベースとして学ぶことができるシステムが構築されれば,自分の長所を活かすことができるリハビリテーション科専門医は,どの医師にとっても非常に魅力的な専門医であると思います.

 

つづく