第6回日本ニューロリハビリテーション学会・The 4th Japan-Korea NeuroRehabilitation Conference報告(柴田暢介)

2015年2月21日と22日の2日間に渡って, 秋田ビューホテルにおいて第6回日本ニューロリハビリテーション学会及びThe 4th Japan-Korea NeuroRehabilitation Conferenceが開催されました. 今回は秋田開催ということで, 医局員・スタッフ一同一丸となり準備にあたりました.

初日の日本ニューロリハビリテーション学会の特別講演1では, 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座准教授の加賀谷斉先生が, 「摂食嚥下の生理と治療成績」の演題でご講演をしていただきました. 豊富な動画で詳細に解説していただき, 普段嚥下にあまり関わらない整形外科医としては新鮮なご講演でした. なかでも, 選択的に嚥下に関わる筋(舌骨上筋など)を電気刺激して嚥下機能を改善させるという治療は, このようなFESもあるのかと大きな感銘を受けました.

加賀谷斉先生

特別講演2はUniversity of Maryland School of MedicineのProf. Keith McBrideに, “Contemporary Functional Electrical Stimulation in Persons with Stroke” の演題でご講演をいただきました. FESの歴史から学会当日(!)にFDAに認可された新しい機器の紹介まで, 多岐に渡る話をしていただきました.

Prof. Keith McBride;
ランチョンセミナーでは, 札幌医科大学附属病院神経再生医療科教授の本望修先生より「脳梗塞と脊髄損傷の再生医療-医師主導治験による実用化-」の演題でご講演をしていただきました. これは脳梗塞や脊損患者に対して, 腸骨から採取した骨髄から間葉系幹細胞を分離して培養し, 静脈投与することで麻痺が改善していくというものでした. 紹介された症例では投与後わずか3日目より上肢機能の劇的な改善を認めていて, 非常に興味深い内容でした.
本望修先生
シンポジウムでは, 東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野准教授の田中尚文先生に「骨格筋パルス磁気刺激装置」の演題で, 骨格筋用の安価でコンパクトな磁気刺激装置を紹介していただきました. 当科でも奥寺良弥先生が末梢への磁気刺激を研究されていて, 今後研究を発展させていく際にこの機械があればベッドサイドで磁気刺激が行えるので非常に有用と思いました. また, 国際医療福祉大学病院リハビリテーション科部長の太田喜久夫先生からは, 「同名半盲に対する反復視覚刺激の効果-ニューロモデュレーションの可能性-」の演題で, コンピューターで視野を計測し, その辺縁に反復視覚刺激を加えることで, 視野が広がる症例があったことをご報告されていました. 滋賀県立成人病センターリハビリテーションセンター医療部長の中馬孝容先生からは「脳卒中に対するボツリヌス療法」の演題で, ボツリヌス療法をする際の注意点について詳細なご講演をしていただきました. 解剖学的な知識, 正確な注射はもちろんのこと, 患者へ注射の効果を十分に説明し, 理解してもらうことがいい結果につながるとお話しされていました. 最後に, 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座助教の平野哲先生からは,「脳卒中片麻痺患者の歩行練習における歩行練習アシストの有用性」の演題で, 歩行練習アシストロボット, Gait Exercise Assist Robot (GEAR)を紹介されていました. 今までは脳卒中片麻痺患者のトレッドミルを用いた歩行訓練は主に長下肢装具を装用していました. しかしこのロボットでは膝関節部にモータを搭載していて,膝伸展や振り出しの補助をすることができます. さらに麻痺肢の荷重を計測する圧センサー, 関節のトルクセンサー, 患者自身が歩きながら歩容を確認できる前面モニタ, など多くのフィードバックを得ることができ, それをもとに補助量を個々の患者に応じて設定することができるというものでした.
また一般演題では当院及び関連施設からも多くの発表があり, 非常に有意義な会となりました.

 

2日目のJapan-Korea NeuroRehabilitation Conferenceでは, 始めに藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座教授の才藤栄一先生より, “Exercise and robotics in neurorehabilitation”の演題で, Balance exercise assist robot (BEAR)や, 前述のGEARの紹介をされました. 招待講演では, 慶應義塾大学医学部整形外科学教授の中村雅也先生より, “Regenerative medicine for spinal cord injury”の演題で肝細胞増殖因子(HGF)やiPS細胞を用いた脊髄損傷に対する再生医療についてご講演いただきました. シンポジウムでは兵庫医科大学リハビリテーション医学教授の道免和久先生よりconstraint-induced movement therapy (CIMT)について, 東京慈恵医科大学附属第三病院リハビリテーション科准教授の角田亘先生からは反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)について, Kyungpook National University Hospital リハビリテーション科教授のYang-Soo Lee先生からは”task-oriented gait training”について, Asan Medical Centerリハビリテーション科教授のCenter Chun Minho先生からは脳梗塞患者に対しての歩行訓練ロボットに関してのご発表をしていただきました. その後の討論でも活発な討論を聞かせていただきました.
ポスター会場では昨日に引き続き多くの発表があり, 2日目も大成功で終えることができました.リハビリテーションは整形外科とは切っても切れない関係にあり, 非常に勉強になった素晴らしい会でした. 整形外科だけでなく, リハビリテーションにも深く関わっていきたいと改めて感じました.
才藤栄一先生

 

 

 

 

中村雅也先生シンポジストの先生方

今回の2日間の学会の成功は学会運営に関わった先生方, スタッフの方々. ご支援いただいた同門の先生方のおかげです, 誠にありがとうございました.

集合写真

お疲れ様でした!