留学報告㉗あとがき(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

留学ブログ あとがき

2018年3月26日に無事帰国し,4月から復職させて頂いております.いない間に変わっていた電子カルテシステムにも慣れ,仕事のペースも思い出し始めました.バタバタしていて投稿できていなかったブログ原稿の残りを全てアップして,留学ブログを終了しようと思います.

 

実は,2017年9月にセットアップのためにサンフランシスコに行ったのが,自分1人だけで行った初めての海外でした.おかげさまで学会や旅行などで何度か海外に行く機会はあったのですが,必ずそばに誰かがいる状況でした.降り立ったときは楽しみと言うより,どちらかというと呆然とか絶望とかに近いモノで,ものすごく不安だったことを今でも鮮明に覚えています.飛行場から鉄道に乗ってダウンタウンに出ることすら一苦労で,1人でレストランに入ったりはできず,買い物するのもいちいち緊張を強いられる作業でした.

9月中旬に家族が合流してからは更にまた不安が増えます.娘の学校が決まり,家具が揃って生活が落ち着くまで1ヶ月ほどかかりました.その間は不安感で悪夢を見ながら動悸をして朝起きるという日が続きました.

OTIに行って,ミーティングに参加してもまわりが話している2割も分からずついていけませんでした.でも,毎日顔を合わせる研究助手さんと,朝にどうでもよい世間話を30分ほどするようになり,だんだんなんとなく聞き取りができるようになってきました.何よりもサンフランシスコという土地柄,英語とスペイン語と広東語が入り乱れる外来を見ているうちに,多少変な英語を恥じらう必要性が全くないことを悟りました.英語は単なるコミュニケーションツールに過ぎないとわりきり,どんな形でも発音でも相手の言うことを理解して,自分の言いたいことを理解してもらうことが重要だということに少しずつ気づいてきました.

少し会話が成り立ち始めるとだんだん楽しくなってくるもので,いつの間にか朝の悪夢や動悸も無くなり,感謝祭やクリスマスなどの休暇には家族で旅行などもする気持ちの余裕もでてきました.ベイエリアの日本人医師の先生や整形外科の先生との交流することができて,今までに無いほどの刺激を受けることができました.

12月まではOTIでリハビリテーションを中心に見学していましたが,1月からは自分の希望する他病院の見学やラボ見学を多数させてもらうことができました.3月になりようやくIRB(日本の倫理委員会)が通り,最後の2週で臨床研究のデータ取りを行っていました.最小限のデータは取れたので今後論文化するように尽力しますし,知り合えた先生方やスタッフとまた共同研究が行えればうれしいと考えています.

留学中,言葉や文化,システムの違いに戸惑い,驚き,羨望し,日本を顧みて日本の良いところ(悪いところも)を思い出し,今後の改善策や試してみたいことを考えていました.そんな繰り返しをしているうちに,今までは考えなかったような広い視野を頂いた気がします.米国の医療システムと日本は根本的に違うし,今の時代インターネットで十分わかると言われるかもしれませんが,生活して肌で経験することで分かったことが多かった気がします.本当にこの経験をさせてもらえて良かったです.今後はこの貴重な経験を少しでも還元していけるよう尽力したいと考えております.

不在の間,医局,外勤先の先生方,スタッフの方々には大変ご面倒ご迷惑をおかけしました.また,留学中は秋田大学のみならず,他大学の先生方,UCSFの先生方やスタッフに多大なるご助力を頂きました.この場を借りて御礼申し上げます.

最後に,この留学を御裁可御高配頂いた島田洋一教授,快く受け入れて下さったUCSF長尾正人先生に深く御礼申し上げます.ありがとうございました.今後ともよろしくお願い申し上げます.