イギリス留学記 ~その6~ (工藤大輔)  

毎朝8:15 (金曜は7:30)から症例検討のカンファレンスがあり,以前から気になっていたが,馬からの転落による脊椎外傷が意外と多い.乗馬という文化の違いと思われるが,逆に秋田の冬場の屋根からの転落による脊椎外傷はこちらでは珍しいに違いない.(というか雪自体があまりないので,雪下ろし作業というものが伝わらない気がするが・・・)また,よく言われるように頚椎椎弓形成術はほとんど行われていない.たいていは前方固定で,後方手術は椎弓切除(+固定)のようだった.前方固定は,DepuyのZero-P stand alone spacerが多く使われているようだった.たしかにプレートを当てないぶん非常にすっきりしていて良い.日本ではよく遭遇する広範囲の頚椎後縦靱帯骨化症は椎弓切除かそれ意外かで議論が白熱していた.特に椎弓切除後の後弯変形について議論となっていた.一応,椎弓形成術の話も出るが,最終的には術者の判断になり,今回は椎弓切除術が行われていた.頚髄症の評価は日整会のJOA(ジョアと呼んでいた) スコアが用いられていた.頚髄症の論文は日本から多数publishされており,この分野においては現在JOAスコアが世界標準なのかもしれない.

先日は,午前のグレビット先生の側弯外来の後,午後にメディアン先生の側弯外来を見学させていただいた.術後の患者さんは皆,真っすぐになった背骨に満足し,大変喜んでいたのが印象的だった.特にGrowing rod術後に大変良好な経過で,執筆された本の症例にもなった患者さんが家族とともに来院され,患者さん本人よりもむしろご家族が術前の我が子の写真の懐かしさと術後の経過に大喜びして携帯のデジカメでスライドの写真を撮る姿や,別の患者さんでは母親が喜びのあまり先生に抱きつく姿が印象的であった.忙しい外来であったが,いろいろ丁寧に教えていただき,modified Shilla法についても教えていただいた.まだ最近始められた術式で,中長期成績や論文はこれから発表されると思われるが,今のところトラブルは皆無とのことである.

手術は,今週も側弯症手術を多く見学させていただいた.一番大変だったのは,年齢がやや高い若年者の固い側弯であった.体格も日本ではなかなか出会えないほど立派であったため展開からすでに大変だった.Bendingで10°ほどしか矯正されない固い側弯で,凹側はほとんど骨癒合していたが,いつものように上下端と頂椎は凸側のみのPS設置を行い,ノミ-ノミ-リュエルの3ステップで骨切りを行い,椎弓下半分は一瞬で無くなった.ノミをハンマーで叩くと刺激で下肢が跳ねたり,いきなり硬膜外脂肪まで見えたりすることがあるので,見ているほうは時にヒヤヒヤするが,手慣れた作業であっという間に終了した.術前にどのように手術をされるのか尋ねたときは,固いからバランスを保つように・・・などとおっしゃっていたが,手術が終わってみるとほとんど真っすぐになっていた.感動!

渡英前に理容室に行ったが、さすがに髪がずいぶん伸びてきたので、最寄りの床屋に行ってみた.事前に島田教授から髪に水もつけずにカットする話やネットの情報も見ていたので不安だったが,背に腹は変えられない.ネット情報では洗髪はないことが多いようだったので、ちょうど手術見学後ということもありシャワーを浴びて、生乾きの髪で行ってみた.予約はとらずに突撃したが幸い店は空いていた.お客さんは一人でなぜかスキンヘッドだった.床屋に来る必要があるのだろうか・・・ すごく不安になった.お店のお兄さんも両腕に見事なタトゥーで怖かったが,引き返すこともできず,Next Please!と声をかけられると,言われるがままに座った.どうしますか?と聞かれたので,スマホの写真を見せて,こんな感じで・・とお願いした.日本の同僚に合わないので,10年ぶりくらいに短くしてもらった.ネット情報ではバリカンを多用するらしい情報があったが,いきなりバリカンで豪快に刈り上げられた.日本と違い,棚に無造作に置かれたハサミ(多分消毒洗浄があまりされていなそう)で豪快に切られた.ただ一応スプレーで水をつけてくれたので,もしかしたらいい店だったのかもしれない.ネット情報では10分くらいで終わると書いてあったが,13分くらいで終了した.お礼を行って8ポンド(1ポンド=169円 5/2/2016現在)支払って店を出た.

QMCのすぐ近くにWollaton Hall (写真12)というところがあり,なんとバットマン ダークナイトライジングでバットマンハウスとして撮影に使われたらしい.ノッティンガムではところどころ桜(?)が咲き始めてきた.(写真13)

(写真12)

写真12

 

 

 

 

(写真13)写真13