運動器疾患治療フォーラム (鈴木真純)

2016年5月26日、順天堂大学大学院医学研究科 整形外科・運動器医学准教授 石島旨章先生をお招きして開かれました、運動器疾患治療フォーラムの報告です。

まず一般演題1題目、木島泰明先生よりいただきました「変形性関節症の、その前に」という題でしたが内容としては、成長期のスポーツ選手の痛みに関する内容で非常に多岐にわたる内容で,良い意味ですっかりだまされました。痛みに関する因子に関して、股関節の内外旋が多変量解析においては有意な因子とはならなかったという結果は、hip groupの木島先生のご発表としてはどうなるかと思いましたが、too many toes sign、腰痛伸展時痛の関連、そして最終的には肩関節そして、股関節の外旋可動域との相関のお話でまとまっており、素晴らしいものでした。続いて、2題目は齊藤英知先生による「変形性膝関節症の手術治療-case discussion」のご発表を頂きました。まず、日頃の外来においてよく勧める機会の多いTKAですが、満足してない患者の割合に関しての報告では、自分が思っていたより意外に多いという印象をうけました。それに対し生理的な膝のmotionを重視した膝のACLを温存するタイプのTKAのcase presentation の術後の動画では、可動域は勿論ですがインプラント主導のぎこちない動きではなく自然な動きを獲得している様子には驚きました。そして最近齊藤先生の代名詞となりつつあるHTOのお話も加わり、変形性膝関節症の手術治療の全般的なお話となりました。

最後に、石島旨章先生による「変形性膝関節症の臨床症状の原因と治療」の御講演を頂きました。変形性膝関節症がなぜ痛いのか、一見至極当然のことですが全てを細胞レベルで説明するのは簡単ではないように思います。しかし、先生の御講演はまさにそれに対する答えと言え、その裏付けとしての臨床的・基礎的なデータのご呈示は改めて非常に勉強になりました。例えば血中の炎症性マーカーと、MRI所見と軟骨下骨に着目したstudy、Gradeに応じた膝関節症の治療に関する効果をまとめたものなどは、専門分野に限らず非常にためになりました。