留学便り15-フランス編最終章-(木島泰明)

2015年の1月から6月まで、フランスのパリとリヨンに留学させていただきました木島泰明です。6月の終わりに半年ぶりに帰国し、7月からは秋田の現場に復帰させて頂いておりますが、早いもので我々家族がフランスに出発した昨年の暮れから今日でちょうど1年が経過しました。

秋田県のみなさんには、9月に行われました第4回秋田県股関節研究会の特別講演1として帰朝報告をさせていただきましたが、ブログを読んでくださっていたみなさんに最後のご報告ができていなかったため、留学便り-フランス編最終章-を記させていただきたいと思います。

パリのことは過去の留学だよりにもレポートしておりましたが、リヨンについてはあまりご報告できておりませんでした。リヨンはパリに次いでフランス第2の都市と言われていますが、パリからリヨンに来て最初の妻の感想は「田舎だね」でした(秋田よりは都会なのだと思いますが)。それは決して悪い意味ではなく、パリの一部の地域で感じるようなきな臭い雰囲気がなく、犬の糞もほとんど落ちていません!メトロもありますが、駅の構内もパリより綺麗で、バスも環境に配慮したトロリーバスが走っています。北東から流れ込むローヌ川と北から流れ込むソーヌ川がリヨンの南部で合流し、この合流地点にコンフリュアンスというエコシティを作るというヨーロッパ最大規模の都市再開発計画が進行中です。ソーヌ側の西側は石畳の街並みの残る旧市街で、リヨンの象徴サン・ジャン大教会の建つフルヴィエールの丘があり、ここからの、世界遺産に登録されている旧市街全体の眺めが絶景です。そしてこの丘の中腹にあるミシュラン1ツ星のTetedoieというレストランが料理も良し、眺めも良し、子連れもよしでオススメです!また個人的にはリヨンの北部にあるLe Parc de la Tete d’Or(テットゥドール公園)もお気に入りです。とても広くて公園内に無料の動物園や植物園があるだけでなく、4歳児でも一人で乗せてくれるゴーカートがうちの子、虎太郎のリヨンの思い出です。

このLe Parc de la Tete d’Orの北の端にあるCité Centre de congrès LyonでISAKOS 2015(第10回国際関節鏡・膝関節外科・スポーツ整形外科学会, 10th Biennial Congress of International Society of Arthroscopy, Knee Surgery & Orthopaedic Sports Medicine)が2015年6月7-11日に行われました。僕がちょうどリヨンにいる期間の開催でしたのでRelationship between pain in athletes and elasticity of muscle-tendon junctionというタイトルでE-posterで発表させていただきました。この学会に参加するため秋田から齊藤英知先生を筆頭に、佐々木香奈先生、佐藤千恵先生、赤川学先生、塚本泰朗先生の5名がリヨンに来てくださいました。12月以来、約半年ぶりに秋田のメンバーと再開でき、リヨンでみんなでディナーを共にでき、本当に心温まるひとときでした。みなさんからたくさんの日本食のお土産も頂き、その後の我が家の食卓が一変したのを思い出します。本当にありがとうございました。またこの学会には以前よりBonin先生とご懇意にされている産業医大若松病院の内田宗志先生とそのグループの先生もいらっしゃっており、Bonin先生の手術のご見学にもいらしていただきました。Bonin先生はISHA(International Society for Hip Arthroscopy)のExecutive Committee Memberで、ISAKOSに参加された多くの股関節鏡で有名なドクターともお知り合いでしたので、ISKOS会期の間にそんな有名ドクターをみなさん招待し、あの有名なポール・ボキューズのレストランの本店でのディナーを開催されました。

前回の留学だより14では、このLyon-Ortho-ClinicのNicolas Bonin先生(ニコラ・ボナン先生とお読みします)の股関節鏡手術についてレポートさせていただきましたが、先生は股関節外科医であり、件数としては人工股関節置換術(THA)の方が股関節鏡手術よりも2倍多く、パリのAlexis Nogier先生と同じような比率です。仰臥位のDirect Anterior Approach(DAA)でTHAを行っている点も同じですが、違うのは牽引台を使用せずにDAA-THAを行っているところです。摺動面の選択はやはりCeramic on Ceramicが基本でしたのでスクイーキングについてお伺いすると、カップの外方開角を少なめにすれば大丈夫とのことでした。具体的な手技はNogier先生の手技(留学だより12を参照してください)とほぼ同じですが、外側大腿回旋動静脈を結紮ではなく凝固している点、関節包をできるだけ温存している点、カスタムメイドステムではなくフランスでよく使われているDepuyのCorailタイプのステムを使っている点が違いました。Robert Judet考案の牽引台を使用していないので大腿骨側の処置を行う場合は、ベッドの足側を傾けて股関節伸展位とした状態で、助手が患肢を胡座の肢位にして内転・外旋位にしながら行います。そのためにNogier先生は器械出しの女性ナースと二人で手術するのに対し、Bonin先生は男性ナース2人に器械出しと助手をしてもらって手術をされていました。この方法の利点はセッティングがラクな点と脚長差を術中に簡便に確認できる点、また脚を自由に動かせるので脱臼抵抗性のテストも術中にしやすい点などが挙げられ、日本のDAA-THAのエキスパートの先生方もこの方法を採用されていることもあり、秋田大学整形外科でのDAA-THAも牽引台を用いずに行う方法を取っています。

リヨンはパリよりもスイス、ドイツ、イタリアに近く、スペインへの通過点でもあり、ヨーロッパの交通の要衝です。つまり、鉄道、高速道路、空路、河川路など、とても充実した交通網の中心にあります。高速鉄道(TGV)がリヨンとパリを2時間弱、ブリュッセルと3時間半で結んでいます。フランクフルト、バルセロナ、ジュネーヴ、ブリュッセルとは高速道路網によって途切れることなく結ばれています。リヨン=サン=テグジュペリ空港は、国外70都市以上を含む約100都市と結んでいます。河川路では、エドゥアール・エリオ港が貨物の通過・流通地点で、多くの企業が進出しているとのことです。この空港の名前でピンときた方もいらっしゃると思いますが、世界的なベストセラーとなっており最近映画化された名作小説「星の王子さま」の作者アントワーヌ・ドゥ・サン= テグジュペリがリヨン出身です。

ところで、留学だより11を読んでくださった方は、ヨーロッパ21カ国の過半数11カ国制覇の目標はどうなったのかと思われているかと思います(そういえばそんな記載もあったね、という方がほとんどだとは思いますが、一部の方には質問を頂きました)ので、その報告を最後にさせて頂きます。留学だより11の時点で、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、ドイツの5カ国を制覇(通過)していたので残り6カ国です。まずはパリ時代にお世話になった虎太郎の幼稚園の友達ファミリーがパリから引っ越されたスペイン・バルセロナにはTGVで行きました。車より断然ラクで週末の一泊旅行で往復でき、妻も虎太郎も大喜び。バルセロナではその友達ファミリーとディナーをご一緒できただけでなく、コンパクトにまとまった様々な観光名所あり、綺麗なビーチありのバルセロナはもう一度行きたい都市の1つです。サグラダファミリアの内部が必見です!

すっかりTGVファンになった我々はモナコ公国にもTGVで行きました。ちょうどF1のモナコグランプリが我々のリヨン滞在中にあることを日本にいるときから知っていましたので、車好きの虎太郎のためにチケットは取っておりました。ただし、モナコのホテルは高くて宿泊できないので南フランスのリゾート地としてパリジャン・パリジェンヌのバカンス候補としても名高いニースに前泊し、F1決勝レース当日にニースからモナコ入りしました。いやいや、すごい人、すごい車、すごいモナコで、とても内容は書ききれませんのでご容赦を。

ISAKOSが終わってから帰国までの間に数日間、自由にできる時間が得られましたのでその時間を利用して、最後にもう一度レンタカーを借りリヨンを出発しました。フランスの山岳リゾート・シャモニーからモンブランを眺めたあとに、マッターホルンを目指してスイスのツェルマットへ。山を堪能したあとは車を電車に載せて国境の長いトンネルを抜け、イタリアのミラノへ。さらにミラノからヴェネツィア、フィレンツェ、ローマと車で巡り、もちろんバチカン市国にも入国。さらにローマからナポリを経て、イタリア半島を横断する形でアドリア海沿岸の港町バーリに。バーリの近くの世界遺産、アルベロベッロのトゥルッリもオススメです。バーリで車を返して、最後にフェリーに乗ってギリシャのアテネまで行ってきました。アテネは暖かく、物価も安く、フランスから遠く離れた熱帯リゾートに来た気分でした。そうです、このギリシャ上陸によって、ヨーロッパ21カ国の過半数11カ国制覇を果たすことができました。純粋な自己満足ですが、行ったことのある都市がテレビに映るだけでも妻や虎太郎の目の輝きが以前と違うのを感じ、そのたびに自己満足感が増すのを感じている今日このごろです。

もちろん自己満足だけではなく、フランスで得られた貴重な経験を現在、秋田の現場で生かすことが出来ておりますし、この留学だけでなく、この経験を活かす機会を頂けているのも島田洋一教授をはじめ秋田大学整形外科医局の先生方、また山田晋講師をはじめ秋田県股関節グループの先生方、さらには留学先をご紹介してくださった順天堂大学の金子和夫教授や本間康弘先生、仙台市立病院の野口森幸先生をはじめ日仏整形外科学会の先生方のおかげです。本当にありがとうございました。今後は全国へ、またフランスを含めた全世界へ発信していけるような成果をあげることで、股関節疾患で苦しんでいる患者さんたちに少しでも貢献できるよう尽力することが、この御恩に報いることと感じております。今後とも何卒宜しくお願い致します。

フランス帰朝報告No.1

左上:テットゥドール公園。左下:フルヴィエールの丘からのリヨン旧市街。右上:ISAKOSのメイン会場。右下:秋田からのISAKOS参加メンバー(撮影:香奈先生)。

 

 

フランス帰朝報告No.2

 

50年間ミシュランの三ツ星を維持しているポールボキューズのレストランでのHip Arthroscopist Dinnner!!

 

 

 

フランス帰朝報告No.3

牽引台を使わないDAA-THAではベッドを傾けて股関節伸展位を取り、助手が下肢を内転・外旋位にする。手洗いさせていただいた時にはこの役回りをやらせていただきましたが体格のいい患者さんではなかなか力が必要です。

 

 

↓ 左上がツェルマットからのマッターホルン、左下はシャモニーのモンブラン?

フランス帰朝報告No.4

 

 

 

 

 

↓ イタリアからフェリーに乗ってギリシャまで。フランス帰朝報告No.5