木島泰明先生 留学便り9

現在、島田教授のご高配で、Alexis NOGIER先生のもと、Clinique Maussins-Nollet(パリ)で研修させて頂いている木島です(これがアップされる頃はLyonに移っていると思われます)。今回はパリのHôpital Necker-Enfants malades(ネッカー小児病院)についてご紹介致します。ここは僕が研修させて頂いたわけではなく、うちの息子が入院してお世話になった病院です。ということで、これからパリに留学される先生達も読んで下さっておりますので、子連れでパリに滞在するのに役に立ちそうな情報も含めてご報告したいと思います。(ちなみに次回はNogier先生の股関節鏡情報の予定です。)

 

我々のパリ滞在は4か月と短いものの、せっかくだからと息子の虎太郎(4歳)を、パリの日本人幼稚園に通わせています。おかげで妻にはママ友ができ、ママ友のみなさんからの情報で大変助かっています。一度、虎太郎の鼻水と咳が止まらないために、日本人セクションというのがあって日本人のドクターもいるアメリカン・ホスピタルを受診しましたが、そこの情報もママ友さん達から頂いています。そしてそこの三村先生に伺ったところ、子供の救急の際はHôpital Necker-Enfants maladesを受診するのがよいと教えて頂いていました。

そんなある夜、虎太郎がお腹が痛いと泣き始めました。以前にも同じようなことがあったものの自然におさまったために、今回も少し様子をみていたのですが、一向におさまらないどころか徐々に泣き叫ぶように痛みを訴えるまでに。フランス語に自信のない我々はためらわれながらも仕方なく、最寄りのメトロの駅付近のタクシー乗り場まで、泣く虎太郎を抱えて急ぎました。こんな時のために、AIU海外旅行保険の証書、母子手帳のフランス語訳、パスポートその他などはセットにして置いていましたので、妻にそれらを持ってもらいタクシーでネッカー病院に向かいました。タクシーの運転手さんもまっすぐ救急入口に向かってくれます。

救急に入ると受付に10人程度の患児とその家族が並んでいました。虎太郎の痛みもいくらか落ち着いたのか泣き止んでいたので、焦らずにその列に並びながら、フランス語の辞書をアイフォーンでめくり、病状説明の文章を組み立ててみる。「彼はお腹が痛い、下痢はしていないが吐いている」。内科は1時間待ち、整形は3時間待ちと書いてある。小児病院なので、小児科と子供の外傷だろう。15分位で我々の受付の番になる。言いたいことは伝わった感じだ。熱はないか、既往歴はないか、と確認されたらしい。熱はない、アレルギーの薬を飲んでいます。通じた?かな。じゃあ待ってて、と言われてから、30分も待たないうちに呼ばれ、個室(診察室、たくさんある)に案内される。

しばらく待つと英語を話せない看護師さんがまず登場。虎太郎は裸にされ身長と体重を測られた後、滞りなくバイタルを取られる。問診はフランス語の辞書に入力してもらいながら何とかクリアー。少ししたらドクターが来るからと言って行ってしまう。続いて現れたドクターは若めの女医さんで、英語のレベルも僕ぐらいでわかりやすい。母子手帳のフランス語訳を渡して、簡単な問診の後に診察。「ただの胃腸炎だと思うけど、水とか牛乳よりコーラなどを15分おきに飲ませてみて」?ん?聞き間違えか?水とかスポーツ飲料を飲ませてということだよね!?でも飲み物は持参してきていないので自販機を探しに行く。クレジットカードで買える自販機を見つけたものの、スポーツ飲料は売っていないので仕方なく虎太郎の好きなリンゴジュース(フランス語でジュ・ド・ポム)を買って戻ってみると、虎太郎は個室から中待合室みたいなところに移されコーラを飲まされている! あとで調べたところによるとフランスでは胃腸炎の際には、糖分や水分の補給と炭酸の効果(どういう効果かは不明!?)を期待して赤いコーラ(つまりライトでもゼロでもないやつ)を飲ませる(大人でも!)らしい。それを15分おきに飲んでは吐き、吐いては飲み(飲まされ)、エコーまでやって頂いた(ラディオロジストが呼ばれて検査してくれる、特に異常なしとのこと)が、腹痛は軽減したものの嘔吐はおさまらず(ですよね)、このままでは返せないので「入院して点滴ね」ということに。

小児の点滴スペシャリストみたいな看護師さん(日本でもいますよね)が現れ、採血と血管確保してくれた後に病室へ。幸い個室で、付き添いの親のためのビーチチェアみたいなベッドも1つある。とりあえず今晩は補液で様子をみて、明日、ご飯が食べられたら帰れるでしょうとのこと。しかし、翌日の朝食はチョコレート、コーンフレーク、ヨーグルト、クッキー、マドレーヌ! お粥がいいんだけど、お粥が、と言ってもあるはずもなく、とはいっても案の定、このメニューではこの状況で虎太郎も全く手が出ず、断念。ようやく昼過ぎになって水分は吐かずに摂取できるようになってきたので、昼食(というかお菓子ですよね)は我々が食べて、虎太郎が食べられるようになったことにしたところ、午後から来た別のドクターの診察を受け、夕方にようやく退院となりました。アパルトマンに帰ったら、すぐにお粥を食べさせました。

というわけで、点滴のおかげで脱水にならずに無事回復させていただき、大変お世話になりました。ちなみに料金はだいたい1500ユーロでしたが、AIUに連絡したところ、病院と直接交渉してくれて、自己負担も立て替え払いもなしですみました。やっぱり海外旅行保険は大事ですね。

ちなみにフランスでは、たとえば尿路感染を疑われた時には(実際、虎太郎もそういうことがあったのですが)、尿検査の処方箋をもらって、開業している臨床検査医のもとを受診し、検査してもらい、結果が出たらそれを持ってまた小児科医のもとを受診しなければいけません。画像検査が必要な時も、開業している放射線科医で検査してもらいます。ですので、整形外科を受診する患者さんは、放射線科で撮ってもらった画像を持って受診し、受診後にはそれをまた持って帰ります(エコー検査もエコー下の関節穿刺なども放射線科医が行います)。もちろん救急を受け付けている総合病院では画像検査も臨床検査も可能ですが。

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人生初の点滴と入院。そしてお菓子な病院食。

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Dolipraneというのがいつも出されるアセトアミノフェンの内服薬。

右は抗生剤。瓶に粉が入っていて、ここにミネラルウォーターを足してよく振り、どろどろになった液体を付属のシリンジで患児の体重の目盛りまで吸って内服させる。

右下は市販されている予防接種薬。これも処方箋をもらい薬局で買ってから、小児科などに持っていって打ってもらう。

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ルールがあってないようなパリの運転も徐々に慣れてきました。

四方から車や人が来るのでとにかく市内はゆっくりに限ります。

右上は冬の凱旋門、右下は春の凱旋門です。パリは温かい時期がおすすめです。

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ただし冬だけの限定版は、写真左上のコンコルド広場の観覧車と写真右上のエッフェル塔の上にある!アイススケート場です。写真左下はバスティーユ広場。このすぐそばにOFII(移民局)があります(写真右下)。ビジタービザで渡仏した場合はここで指定の日時に健康診断を受けて滞在許可証をもらう必要があります。結構な人数が開門前に並びます。

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パリの街中は犬の糞に要注意!(写真左上が注意の看板!?)。写真右上は、ふんじゃったところ!。写真の下段はパリのメトロ(地下鉄)です。車両によっては自動ドアではなく、駅についたら自分で取っ手を回転させて開きます。

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 シャンゼリゼ通りのレオンというお店はムール貝で有名。子連れでも入りやすく、貝以外のメニューも充実しています(写真左)。オペラ地区にはラーメン屋をはじめ、本当の日本食屋さんがたくさんあります(写真右上)。でもこの地区はスリやひったくりが多いそうで要注意。僕も一度家族で歩いている最中にジプシーと呼ばれるおばさん集団に後ろから両腕をつかまれ身動きできない間に財布を取られそうになりました。

 フランスでは外食税が20%かかるので高いです。ステーキならフランスの大手スーパーMonoprixのビフテキと書いてある肉を買ってきて家で焼くのが楽だし安いです(写真右下)。

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4月の後半だけ広いアパルトマン(マンション)に引っ越しました。今までの狭いアパルトマンと同じ15区ですが、セーヌ川沿いのビラケム橋とグルネル橋に挟まれたこの地区はこのようなマンションやホテルが立ち並び、タワー群と呼ばれています。広いと言っても18畳程度のワンルームですが、窓からは夕日とセーヌ川と自由の女神(隣のタワーが邪魔でエッフェル塔は見えませんが)が見え、近くには子供が遊べる公園、焼き肉店、ボーグルネルと呼ばれるショッピングセンターがあり、日本人も多く、とても住みやすいところです。予算が許せばパリ滞在はここが一番と、日本人のみなさんは口をそろえておっしゃいます。

 

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ブローニュの森にある庭園と遊園地は子供に人気ですが、そこにルイヴィトン財団美術館があり(写真左上)、ノルウェーのオスローからムンクの叫びも来てました!写真右上はマカロンで有名なシャンゼリゼのラデュレというお店ですが、食事をできるスペースもあり子供も食べやすい小さいハンバーガ-もおいしいです。写真左下は日本人セクションのあるアメリカン・ホスピタル。こっちの日本人はアメホスと呼んでいます。写真右下は毎年4月の初めころに開催されるパリマラソンのスタートの場面。パリの名所をすべて回るので、世界で一番美しい42.195kmと言われています。

 

写真9

日本語のわかる歯医者さんもネット検索でヒットします。写真左上は妻が治療を受けているところ。普通の家(大きなアパルトマン)で開業しています。ここは奥さんが日本人なので通訳してくれました。写真右上はガソリンスタンド。最初に機械でクレジットカードでの支払い手続きをしてから給油するタイプとあとで店内で料金を支払うタイプがあります。写真下段はコインランドリー。けっこうあちこちにあります。こっちの洗濯機は、洗剤を入れる場所が2つと柔軟剤を入れる場所が1つあり、洗剤を入れる場所が2つあるのは、1回目の洗濯用と2回目の洗濯用だそうです。2回洗ってすすぎに入るんですね。

 

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車好きの子供にはエッフェル塔近くの公園で日曜日には2ユーロでゴーカート(自分の足でこぐやつですが)ができます。トロカデロのシャイヨ―宮近くには水族館も(写真右下)。定番はパリのディズニーランド。お城がピンクで女子に人気です。パリ市内からRERという国鉄に乗って行けます。パリ市内を出発して1時間くらいはかかりますが。RERのラインAの終点で下車してください。車好きのお子様の場合はホテル・サンタフェに泊まるとホテル全体がディズニー映画の「カーズ」がテーマになっているので、とても喜びます。

 

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パリは洋菓子でも有名ですが、子供の好きな白いショートケーキがなかなか手に入りません。でもYAMAZAKIがありましたのでゲットできました(写真左、住所は6, Chausse de la Muetteです)。和食を作りたいときにも日本食料品店で買うと高いので、TANG freres (陳兄弟の意)という中華系スーパーが安くて便利。13区に大きい店舗がありますが、15区の小さめの店舗でも十分。それからオペラには日本のBOOK・OFFがあります。日本語の本の売買ができます!

 

そしてパリにはRestaurant Japonaisと書いてある日本食レストランがたくさんありますが、ほとんどが中国人と思われる方々がやっているお店で、本当の日本のメニューとはちょっと違います。でも、どこのお店でも寿司と海鮮丼と焼き鳥的なものは置いていて、本当の和食屋さんよりは安く、持ち帰り(テイクアウト、フランス語ではアンポーター)できるので結構使えます。

 

以上、今回はパリ子連れ滞在お役立ち情報でした。少しでも多くの方のお役に立てれば、おるいは暇つぶしの読み物にでもなれば幸いです。次回は、整形外科医向け情報をお送りしたいと思います。